官能小説販売サイト 川口青樹 『ヌーディストスポーツ〜変態小説・傑作集〜』
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川口青樹    ヌーディストスポーツ〜変態小説・傑作集〜

目 次
バイ×バイ夫婦
ヌーディストスポーツ
シーメールピクニック
天国か地獄か

(C)Seiju Kawaguchi

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   バイ×バイ夫婦

 ベッドの上では、手が八本、足も八本、そして剛毛と白い肌がまざり合った肉の塊がくんずほぐれつしていた。
 その肉塊からもれてくる異なった荒い息づかいと嬌声だけが人間的だった。
「うううーっ」
「あっ、あっ」
「おおーっ」
「ああーん、あーん」

(夫の浩二が男の方も愛せるなんて知りませんでした)
(「俺だって、お前が女も好きだなんて知らなかったぞ」)
(私達は、インターネットのチャットで出会い、結ばれました。でもー、婚約直前になってこの人からこんな話を聞かされるなんて思ってもみませんでした)

「実はな、これはどうしても話しておかなければならないんだ……」
(結婚前の夫の深刻な顔と声でした。でもー、結局これでよかったのかもしれません。だって考えてみますと、結婚してから後で告白されるよりも……。それに……ウフフ)

「君のことは愛している。何者にもかえがたい存在さ」
「ええ、私もよ」
 葉子はいつもと変わらない笑顔でうなずいた。
「ただ、それはそれとして、そのー、なんだ、実は男も好きなんだ」
「えっ、それって、あのー、……ゲイってこと」
「うーん、そういうことになるのかなぁ。……僕のこと、嫌いになったかい」
(この時の驚きはどうでしょう。……でも、ちょっと普通の驚きとは違っていたのです。「ええーっ、何よ、それっ、とんでもないわ」とか、「どうして、どうして、ひどーい」とかいうのとは違うのでした)

「どう言えばいいのかなぁ、つまり君も好きだけど、それとは別に男ともつきあっていきたいんだよ」
「……つまりそれってー、そのことを私に認めて欲しい。それが結婚に当たっての条件だというのね」
「やっぱりー、無理なことだよなあ……、それが普通だよなぁ……」
(まるで今この瞬間に人生を諦めたような彼の声)

「そして、それを今言うってことは、結婚後もそういうおつきあいをしたいってことよね」
「……」
「いいわよ」
「えっ、今なんて」
「あなたが、男の人とつきあってもいいってこと」
「ええーっ」

(このカミングアウトによって、私とのことが破綻してしまうと思っていた夫にとっては望外の返事だったようです)
「でもー、私にも希望があるの」
「ああー、言ってくれ。なんでもきくよ」
(まるでそれさえ叶えられるなら、悪魔にでも魂を売り渡しそうなご機嫌な夫の声でした)
「それじゃあ言うけど、私もあなたのことが好きよ。愛しているわ」
「うん、うん」
「でもね、もう一人愛せるのよ」
「えーっ、よっ、葉子、俺以外にも誰か好きな奴がいるのか」
(夫はこの時私が二股をかけていたと思ったそうです)

「そうね」
「うー、誰なんだ。そっ、そいつと、俺とどっちを選ぶんだ」
「まあ、落ち着いて」
「こっ、これが落ち着いていられるかってんだ」
「私が好きなのは女性よ」
「えっ……」
「そうなの、貴方と同じように私は同性も好きなのよ」

(あんな面白い、いえ彼にはすまないですけど、無邪気な彼を初めて見ました)
「ねえ、今はそのお相手はいるの」
(お相手というのは、例の男性の方のことです)
「ああ、一応いるけど……」
「えっ、それってしょっちゅうお相手が変わるものなの」
「えっ、いや、それは、その……」
「私はねー、結構固定しているの、今の子とはもう一年以上になるかしら」
「ああ、実は俺もそのくらいなんだ」
「……ねえ、お互いに紹介しあわない」
「しょっ、紹介って……」
(夫はここで絶句しました)
「そうね、ちょっと変則的だけどダブルデートっていうのはどう」
「ううーん」
「私の方は大丈夫。その方がお互い全てがわかっていいんじゃないの」
「……わかった、話してみるよ。ひょっとしたらだめかもしれないが……」


 
 
 
 
〜〜『ヌーディストスポーツ〜変態小説・傑作集〜』(川口青樹)〜〜
 
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