館 淳一 肉奴調教
目 次
淫らな遺伝子
ふっくらブラジャー愛のあと
録音する女
背徳のガーターベルト
お仕置きは手錠で
姉・調教志願
母の調教日記
抉られた後庭花
お仕置きして下さい!
肉宴の生け贄
(C)Junichi Tate
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淫らな遺伝子
1
桑野るみ子は首都圏のベッドタウン、夢見山市に住んでいるが、最近、月に二、三度、都心へ出かけてゆくようになった。買い物とか友人たちとの会合などの理由をつけて昼ごろに家を出、夕刻に帰宅する。
いつも遅く帰宅する夫の郁男は、妻のそういった遠出を気にも留めていない。彼の関心は新しく任せられた支店を軌道にのせることに向けられている。家電の量販店チェーンに勤めて、今度ようやく店長に昇格したのだ。
妻の外出の回数はとりわけ多いというわけでもなく、金銭的な浪費も伴っていない。中学生になった息子の治樹も、特に問題のない学校で特に問題のない生徒だ。良妻賢母型の妻に恵まれ、仕事に没頭できることを郁男は満足しているようだ。
土日も出勤して多忙の夫だが、定休日の前夜は必ずるみ子と交わる。回数は少ないかもしれないが、セックスに関しては満足させている――という自信を抱いているに違いない。女ざかりの三十八歳であっても、ふだんは地味に装っている妻が不倫に走るなど想像したこともないだろう。
うららかな晩春の週日正午すぎ、るみ子は家を出て夢見山駅行きのバスに乗った。若草の色のスーツを着こなした妻の姿を見たら、あるいは夫は不安を覚えるかもしれない。
どこと言って指摘は出来ないが、確かに日常の妻からは発散されていないフェロモンのようなものがふり撒かれているから。
――るみ子が戸川の仕事場がある早稲田のマンションに着いたのは午後の一時を少し回っていた。
戸川卓志は四十代半ばの見るからに精力的なタイプの男で、自分の名を冠した小さな編集プロダクションを経営している。社員は数人で、大手出版社の下請け的な仕事をやっているらしい。
マンションのロビーにある公衆電話から教えられた携帯電話の番号にかけると、すぐに戸川の野太い声が応じた。他の人間の話し声や電話のベルの音が聞こえるから事務所の自分のデスクに居るのだろう。プライベートな相手、特に彼の趣味に関する人物からの電話はすべて携帯で受けるのだろう。
「おお、来たか。よし、トレーニングルームに来い」
戸川はこのマンションの五階にオフィスを構えているが、それとは別に六階にもう一室を借りている。自宅が横浜の外れなので、仕事が深夜に及んだり徹夜になった時に泊まるためだというのが表向きの理由で、実際は自分の趣味――女を縛って弄ぶという倒錯趣味を満足させる場としている。ここに連れ込まれた女たちは、部屋の主の欲望を満たすマゾヒストとして調教される。だからトレーニングルームなのだ。
るみ子が着く前に戸川はすでにその部屋に移動していた。女たちと接する時の制服ともいえる黒い、ゆったりしたガウンを着て。
四角い顔に生え際の後退してゆく広い額を持ち、眼光は鋭いが全体に温厚そうな容貌。最近は鼻の下に髭を蓄え、時代劇で個性的なわき役をこなす俳優のような印象を与える。実際、髷を結い、武士の装いをさせたらよく似合う体格と風貌だ。
二LDKのマンションの一室は、ごくふつうのベッドルームだが、もう一室は遮音工事を施した、ほとんど家具調度のない洋間である。表通りに面したベランダ窓には常に分厚い黒いカーテンが引かれ、交通の騒音さえ、ほとんど聞こえない。
八畳間ほどの空間は、壁と天井が黒い布で覆われ、床には深紅のカーペットが敷きこまれている。壁の一部、大人が手をあげてようやく届く部分に二ヶ所、鉄の鉤が打ち込まれている。今はそこに二本の革製の鞭――一本は房鞭、一本は先端がヘラ状の乗馬鞭――がぶら下がっているが、いずれるみ子はバンザイした姿勢で左右の手首をその鉤にくくりつけられることになる。
部屋の中央には籐製の、座った者の頭の上にまで伸びる大きな背もたれのついた肘掛け椅子が一つ。これに戸川が座った時は、るみ子はその前に立ち、裸身を眺められ、あるいは跪いて彼の股間に口で奉仕する。彼女が座らされた場合は、もっぱら大股びらきの姿勢で四肢を拘束され、肉体を好きなように責め嬲られる。戸川は蝋燭を使った拷問責めが好きで、この椅子にくくりつけられたるみ子は何度、犯されながら苦悶の果ての絶頂を味わったことだろうか。
籐椅子の背後には、全身を映すためのスタンドのついた細長い鏡が置かれている。女たちはこの鏡に映し出される自分の姿を見せつけられていっそうの恥辱を味わわされる。これもまた責めのための道具だ。その他にあるものといえば、いろいろな器具、薬品を載せた、医療機関で用いられているようなキャスターのついた小机だけ。
部屋の照明は天井の四隅に取り付けられた角度を変えることの出来るスポットライトで、それは椅子のまん前の床に光束が集中するようになっている。だからるみ子は、まず最初にそこに立たされると、舞台の上で演技を始めるストリッパーになったような気がする。
「脱げ」
籐椅子の上でゆったり寛いだ姿勢をとった部屋の主は、美しく化粧している三十八歳の熟女人妻に、冷ややかな声で命じた。
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