村雨狂花 『母は子の前で〜超ハードSM小説集〜』
村雨狂花 母は子の前で〜超ハードSM小説集〜
目 次
泥濘に戯く人妻人形
餓狼・淫肉の姦計
隷獣の王国
賭け贄しぐれ
お尻で
歔
すすりな
く快感痴獄
(C)Kyoka Murasame
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泥濘に戯く人妻人形
ハイキングの罠
ハイキングに行くなんて、いったい何年ぶりのことだろうと、康子は思った。
そういえば、結婚前、夫とそれらしきことをした覚えがあるから、およそ十五、六年ぶりのことかもしれないと、三十五歳の人妻は苦笑するのだった。
結婚したのは、二十歳の時で、高校を卒業し、都会の商事会社に勤めて二年目のことだった。
夫は、同じ会社の経理マンで、いまも同じ部署にいるが、知り合ったのは、社内で毎年行なわれるクリスマスパーティーであった。ふとしたことでくちをきくようになり、それから自然と交際がはじまった。
康子にすれば、まだまだ子供だったから、結婚など考えてはいなかったが、夫のほうは当時二十九歳、少なからず焦ってはいたのだろう。なかば強引に結婚までもっていかれたという感じではあった。もちろん、現在、後悔しているわけではない。
ただ、ひとつだけ、時折、ふっと思うのは、すぐに身籠ってしまったので、本来の青春と呼べる時期があまりに少なかったということかもしれない。
遊び足りなかったというわけではないが、二十代のすべてを子育てだけにとられたかと思うと、時々、虚しいというか、やるせなくなることがあった。
(でも、そのおかげで、いまはラクが出来るわ。そうよ。いまが、これからが、あたしの青春よ)
このごろでは、暇をみつけては、近所の友人と、ホテルへおいしいものを食べに行ったりすることもある。車の免許も取って、夫の車で近くを乗りまわしている。
二、三年前なら、ハイキングに誘われたところで、即座に断わっていただろう。
長女のほうはともかく、下の男の子がまだ小学生だったからだ。
いま、長女は高校一年生、長男も中学生になって、ようやく手が離れた。甘えん坊の男の子も、いまは母親よりも部活で頭がいっぱいだ。
ハイキングは、最近、友人の誘いでかかわるようになった市民グループの企画したものだった。長女の由加里もめずらしく一緒に行くという。
康子は、ふたり分のおにぎりを作って、いそいそと集合場所にでかけた。駅前のバスターミナルだ。バスで三十分ほど行ってから歩き出すのだ。
「ちょっと早くきすぎちゃったかしら」
「ママ、張りきりすぎよ」
一六三センチと、ほとんど自分と同じ背たけになった由加里が笑っていう。その笑った顔を見ていると、つくづく自分の若いころに似てきたと思うのだった。
「どうかした? あたしの顔に何かついてる?」
「別に」
康子はニヤッと笑った。
「何よ、気持ち悪い。いってよ」
「あなた、きれいになったなと思って」
由加里はもう生意気に口紅を塗っていた。だからことさら女っぽく見えた。
「あら、ママのほうがずっときれいよ。若いし」
「あたしはもうダメよ」
「そんなこと思ってないくせに。誰が見ても高校生の子供がいるようには思わないわよ。友達なんか、みんな、若くてきれいなお母さんねっていってるわよ。あたし、ママがすっごく自慢だもん」
「ふふ。ありがと」
母子が雑談しているうちに、パラパラとひとが集まってきた。知らない顔ばかりだった。
ようやく知った顔の老人がきて、康子は頭を下げた。といっても、顔をかろうじて知っている程度なのだ。
「あの、木下さんは、いらっしゃるんですよね?」
康子は老人にきいた。その木下という主婦に誘われたのだし、彼女がこないことにはどうにも間がもてないからだった。
「あ、木下さんね。今日はこられませんよ」
「えっ!?」
「電話がありましてね。なんでも急用が出来たとかで」
「そ、そうですか……」
なんとなく、はしゃいでいた気持ちがそがれる気がした。娘をつれてきてよかった、とつくづく思う。これで娘がいなければ、ちょっと淋しい思いをするところであった。
「どうしたの?」
由加里が何かを見ていた。
「えっ!?」
「何を見てるの?」
「あいつ」
「あいつ?」
オートバイに乗っていた革ジャンの若者が、遠くのほうで由加里を見ている。
「いやなやつ」
「知ってるの?」
「ちょっとね」
「由加里っ」
康子は、心配そうにいった。
「つき合ってなんかないわよっ、あんなやつ……。ただ、つきまとってくるのよね、あいつ。あたしが無視するからよけいに。フフ」
ヘルメットをかぶっているから、顔はまったくわからない。
「まだじっとこっちを見てるわね」
〜〜『母は子の前で〜超ハードSM小説集〜』(村雨狂花)〜〜
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