官能小説販売サイト 霧原一輝 『夜の新米監督』
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霧原一輝    夜の新米監督

目 次
第1章 ランジェリーパブ「小指の思い出」
第2章 新人は女子大生
第3章 夜の還暦パワー
第4章 女子マネの誘惑
第5章 唇の甘い記憶
第6章 美羽、危機一髪
第7章 むちむちチアリーダー
第8章 女神と結ばれる夜
第9章 決戦の時

(C)Kazuki Kirihara

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 第1章 ランジェリーパブ「小指の思い出」

     1

 赤く変わった照明を浴びて、ピンクのナース服に身を包んだコンパニオンたちが客の膝に乗り、軽快なポップスに合わせて腰を揺すっている。
(今週のナースフェア、いまいち客の入りが悪かったな)
「ハッスルタイム」で一時的な盛りあがりを見せる店内をカウンターから見渡して、おおすみはひそかにため息をついた。
 大隅りんろうはセクシー・ランジェリーパブ「小指の思い出」の雇われ店長である。
 大学を出て、東京でブランドものの輸入に係わる仕事をしていた。四十歳を過ぎて仕事にも自信がついたが、それがわざわいして社長と衝突して会社をやめてしまった。
 地元である北関東の田舎に戻ってぶらぶらしているところを、ここのオーナーに声をかけられて、「小指の思い出」の店長を引き受けた。
 駅からも離れ、真ん前に消防署がある小さな雑居ビルの三階にある十坪ほどの店である。
 立地条件は悪いが、地元の役場に勤める公務員とか近くにあるD製鋼の社員、個人会社の社長などが来店してくれるので、なんとか潰れずにやっていけている。
「ああン、もうスケベなオッサンやな。キスはあかんて言うたやないか」
 ナース服の胸元から乳房のふくらみをのぞかせたが、ハスキーな声を響かせて、タクさんの膝からおりた。
「悪い、悪い……來未ちゃんの唇があんまりセクシーだからさ。もうしないから、ほら、これで機嫌直してよ」
 タクさんが千円札を数枚、來未のオッパイの谷間に押し込んだ。こう見えても、タクさんはD製鋼の管理部課長である。
「しょうがないな。キスはあかんからな」
 來未はタクさんの膝をまたいで、太腿の上に腰をおろした。音楽に合わせて腰を揺すると、タクさんが白衣のなかに手を突っ込んでオッパイを揉みはじめた。
「小指の思い出」ではコンパニオンに似た芸能人の名前をつけることにしている。來未がこの名前になったのは、彼女が関西出身で雰囲気がこう來未に似ているからだ。二十台後半で若いとは言えないが、その気さくな性格とぷりぷりした巨乳で人気がある。
「小指の思い出」はハッスルタイムに、チップを払えばその金額に応じてお触り自由になる。したがってコンパニオンも人気度によって稼ぎに違いが出る。來未は常にナンバーワンだ。
 といっても、キャストは総勢七人で、しかも半分以上が素人のアルバイトだから、トップと言っても威張れたことではないのだが。
 今日は、來未のほかに、ふみえ、なつが出勤して、客の相手をしていた。
 千夏がキャッ、キャッ言いながら、塗装業者のたかさんに乳房に挟んだポッキーを食べさせている。化粧はケバいが、若く、痩せていてわかつき千夏に似ているので、特定の客にはもてる。これで、アニメの専門学校に通っているというから驚きだ。
 定年退職したしまさんの膝にのって、オッパイを含ませているぽっちゃりした癒し系の女は、ふみえといって二十九歳のベテランだ。ほそかわふみえもどきのしっとりしたお色気で男どもを悩殺している。
 都会のキャバクラのキャストと較べれば、その美人度、洗練度で落ちるのは仕方ないところだ。が、地方のセクシーパブのなかでは、まあまあの水準だと大隅は思っている。
 やがて、ハッスルタイムが終わり、店内が猥雑な雰囲気からごくフツーのパブへと落ちつきを取り戻す。
 來未がカウンターに近づいてきた。ナース服から魅惑的な胸の谷間をのぞかせて、
「店長、大学まで野球してたんやってな。ほんまか?」
「そうだけど……それが何か?」
「あとでちょっと話があるんや。ええやろ」
「……いいけど、何だよ?」
「あとでな」
 そう言って、來未はアイスペールを持って客のもとに向かう。
 ぴちぴちのナース服に包まれた尻が揺れながら遠ざかっていくのを眺めながら、大隅は自分の野球人生を思い出していた。
 中学、高校と部活で野球をやり、高校時代にはあと少しで甲子園というところまでここT県の地方予選を勝ち抜いた。野球を捨てきれず、大学のセレクションに参加して合格し、東京の私立大学に進学した。
 高校までは強肩をいかして捕手を、大学では強打を買われて外野手をやっていた。三年の時にはレギュラーで活躍したが、社会人やプロで通用するレベルでないことは自分が一番よくわかっていた。
 社会人になってからも、時々誘われて軟式野球をやっていた。今も地元の野球大会にはわれて出場する。だが、最近は不摂生をしているせいか、それとも四十五歳という歳のせいか、足がてんで動かない。一塁まで駆け込むだけで息が切れる。
(どこかの野球チームに参加してくれというのだろうか? やる気はあるんだが、何しろ足が動かないからな)
 などとぼんやり考えているうちに、クローズの時間がやってきた。
 客が帰り、コンパニオンも來未を除いて帰宅して、残されたのは來未と二人だけになった。後片付けを終え、ソファに腰をおろして仕事後の煙草を吹かした。
「さっきの話って、何だよ?」
 隣に座った來未を見る。ナース服姿の來未がハスキーボイスで言った。
「野球の監督、頼めんやろか」
「うン?……野球の監督?」
「そうや。フツーの野球やないで。六十歳以上がやる野球や。たしか、還暦野球言うとったな」
 還暦野球は話には聞いている。客のゲンさんが還暦チームに参加しているらしく、時々自慢話を聞かされていた。


 
 
 
 
〜〜『夜の新米監督』(霧原一輝)〜〜
 
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