官能小説販売サイト 由紀かほる 『牝豹は夜の狩人(原典版)』
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由紀かほる   牝豹は夜の狩人(原典版)

目 次
プロローグ
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
第8章
第9章
第10章
第11章
第12章

(C)Kaoru Yuki

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   プロローグ

     1

 その日、六時三十分すぎに中央線武蔵小金井駅に降り立っためぐみ朱里は、駅前のスーパーで買い物をしてから、恋人である秀樹のアパートへ向った。まだ、昼間の暑さが残る蒸し暑い夕刻だった。
 歩いて十五分ほどかかったが、朱里はこの道を通うのが嫌いではない。閑静な住宅と分譲地の続く道のりでも、その先に千田が待っていてくれると思うと、手にかかる買い物袋の重みも、ハイヒールの爪先の窮屈さも、どこか心地良い疲労に感じられた。
 千田から半月ぶりに電話があったのは、午前十時ごろだった。
「今夜会えるかな」
「お仕事の方は?」
「やっと終ったよ。今朝方ね」
「大変だったみたいね」
「ああ。これだけ熱中して、しかも充実した仕事をできたのは、新聞社に入って六年になるけどはじめてだ。たった今、出来上った記事をデスクに渡してきたところさ。来週の朝刊から十回の連載で載る予定になってる」
「おめでとう」
「いや、まだ読者の反響をきいてみないことにはね」
「でも、自信はあるんでしょう」
「ある」
 力強い声で答えた。
「連載がはじまったら、ちょっとした大騒ぎになると思うよ」
「どんな内容?」
「そいつは言えないよ。前にも言ったろう。知りたければ、来週の朝刊を読むこと」
「ずい分もったいつけるのね。今度に限って」
「それだけ大きなヤマだったんだ。でも、君には特別に教えてあげてもいいと思ってる。今夜、こっそりとね」
「是非教えて欲しいわ」
「よろしい。今日、五時でどう。たまには高級レストランで、ステーキでもおごるよ。二週間も放ったらかしにしておいた罪ほろぼしにね」
「あら、無理なさらないで。今日は二十三日よ。それに、私午後の講義のあと、クラブに顔を出さないといけないの」
「少林寺拳法の規律は愛より強しかい」
「いいえ、別ものよ。二つを比べること自体おかしいんじゃないかしら」
「しかし、君は僕よりも少林寺を選ぶ」
「選ばない。どちらも選ばないわ。そして、両方とも選ぶの」
「欲張りだな」
「そう思う、本当に」
「いや、君らしいよ。そして少なくとも僕は君のそういうところが嫌いじゃない」
「ありがとう」
「いいえ、どういたしまして。で、僕はどうすればいい」


 
 
 
 
〜〜『牝豹は夜の狩人(原典版)』(由紀かほる)〜〜
 
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