山口 香 花唇の誘惑
目 次
第一章 熟女の舞
第二章 姉妹の仲人
第三章 好奇心ざかり
第四章 女教師の滴り
第五章 娘から成人へ
第六章 女性記者の花唇
第七章 妊婦の雫
第八章 天使の卒業式
第九章 フェロモンボディ
第十章 女医の乱舞
(C)Kaoru Yamaguchi
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第一章 熟女の舞
1
世田谷区成城の高級住宅街の一角。時刻は午後一時にもかかわらず、車も人影もなく、不気味な静寂に包まれていた。
白百合銀行成城支店の渉外担当代理である鈴木昇は、黒塗りのコンクリート塀で囲まれた邸宅の前でバイクを駐めた。
都議会議員の栗原茂夫、五十五歳の豪邸である。
栗原家は、成城近辺に多くの不動産を持つ大地主である。現在の当主である茂夫は三代目で、東京都内に十数店舗のチェーン店を持つドラッグストア「くりはら」の社長でもあった。
栗原茂夫は三十代で区議に初当選し、その後都議に移り、すでに四期目に入ってもいた。保守系の幹事長であり、次期当選をはたして五期目に入ると、都議会議長もまちがいないだろう、とのマスコミの噂もある人物であった。
彼には二人の息子と一人の娘があり、息子二人はドラッグストア「くりはら」の副社長と専務であり、娘婿は常務であった。
三十歳になる長男を来期の区議選に出馬させようとしている、という噂も流れていた。
鈴木は厚い門扉の脇の潜り戸を入り、十メートルあまり先にある玄関口に向かった。右手は樹木に遮られていて庭が広がり、左手は車を六、七台駐められる駐車スペースになっていた。
広い玄関口の脇の壁に埋めこんであるインターホンの釦を押すと、一呼吸おいて、
「はい、どちらさまですか?」
栗原家の主婦の、甘い響きのある声が返ってきた。
栗原由佳、四十歳、栗原茂夫の二人目の妻であった。先妻は三人の子供を生んで数年後に癌に冒され死亡してしまった。
現在の妻である栗原由佳は、元は銀座のクラブの人気ホステスだったらしい。
「白百合銀行成城支店の鈴木ですが……集金に伺いましたが、よろしいでしょうか?」
鈴木はインターホンに向かって言いながら、ネクタイの結び目を直した。
「ちょっと待っててください。玄関口にお入りになってて……」
栗原由佳がそう答えてインターホンを切ると、鈴木は玄関ドアを開け、中に入った。
広い玄関口には来客用の長椅子が配置され、大きな観葉植物の鉢植えが二鉢並べられていた。
奥に向かって廊下が伸び、その手前に集金の時にいつも通される応接室があった。
鈴木は玄関口の来客用の長椅子に腰を下ろし、栗原由佳が現われるのを、観葉植物の鉢植えをぼんやりと眺めながら待った。
チラチラと鈴木は腕時計を見た。すでに玄関口に通されてから五分がたっていた。
(何をしているんだ。いつもならすぐに出てくるのに……)
胸のうちで吐き捨てるように言った時、
「お待たせしてごめんなさい」
ペタペタペタッとスリッパの音がして、廊下の奥から栗原由佳が小走りで現われた。
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