官能小説販売サイト 作者不詳 監修・小宮 卓 『耽 溺〜性の秘本セレクション11〜』
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作者不詳 監修・小宮 卓 耽 溺〜性の秘本セレクション11〜

目 次
耽 溺
 第一章 黒 猫
 第二章 肉の歓喜
 第三章 責め折檻
 第四章 白痴の戯れ
 第五章 転落の道
 第六章 母娘の輪姦
 第七章 密輸の男
 第八章 悪戯する老人
 第九章 人肉市場の生態
 第十章 歓喜の死
夜の華
 愛慾の谷
解説

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耽 溺
丹羽一郎


 第一章 黒 猫

 首都東京駅乗車口に降りると、中央郵便局や丸ビルの高層ビル等が立ち並んでいる広場から都電が一本走っている。28番の錦糸堀行と31番三輪行が、二、三分間隔で、この一本のレールを走っているが、28番錦糸堀行は洲崎遊廓へと、31番三輪行は吉原遊廓へと案内してくれる。
 洲崎遊廓の歴史を述べる前に、読者をこの遊廓に案内する道順をず記しておこう。前記の様に東京駅乗車口前から都電28番の錦糸堀行に乗車するか、地下鉄で日本橋交叉点で下車して、やはりこの28番の都電に乗る。一つは総武電車錦糸町駅で下車、やはり28番の東京駅発都電に乗車し、各々、洲崎で下車すればよい。混雑する都電がいやなご仁はタクシーを拾って「洲崎」と言えば、運チャンは、ブーブーと洲崎遊廓内で車を停めてくれる。木場を通って木の香り漂う洲崎遊廓は、都心から近い所にあるので交通の便利は至ってよい方で、遊興費の割安な割に設備や、玉も揃っている方である。言うなれば、都内ではセカンドクラスの方で、吉原遊廓、新宿遊廓、鳩の街遊廓についでの桃源境であろう。
 以上で地理の案内は紹介ズミになるので、いよいよ本編の主題にペンを進めながら、洲崎遊廓の歴史も述べてみることにした。
 三月に入って東京に雪が降ることがある。しかし二月の声も聞かれなくなり、三月に入れば流石さすがに初春らしい日がつゞくが、そうした三月初旬の或朝のこと。『黒猫』ではマダムの礼子をはじめ、抱え妓四人にやりばばあ、女中までが上を下へと大騒ぎを演じていた。
「おい! どうしたんだ! こんな早くから」
 一度家を出ると何日家を空けるか、さっぱり見当のつかないマスターの津村が、和服の上にマント姿でひょっこり玄関から這入って来たので、マダムは今までの大騒ぎはケロッと胸から消えてしまう思いをしながら、
「マリ子が今朝トンズラしたのよ」
 奥へ通る良人おっとの後からいて行く。騒いでいた店の妓達は各々部屋に引揚げながら、
「何て恩知らずのアマなんだろうね、どっかで会ったが最後、顔に塩酸をひっかけてやるから覚えているがいいや」
 自分の靴をいて行かれた恵子が肩をおよがせて口をとがらせた。
「あの新規の妓か?」
 津村は礼子が今まで寝ていた夜具の上にマントを脱ぎ捨てると、懐の中から原稿の束や辞書類を、礼子の白い手に渡して突っ立っている。彼の前に、礼子が膝をついて良人の後に腕を回し、帯を解いてから着物の前を拡げると、股引の上に顔を埋めて良人の腰を抱く。
「おいおい、何をするんだ! くすぐったくなるじゃないか」
 急に股間に顔を埋めて抱きつく妻に、上から見おろした津村は、いつまでたっても稚気の抜けない礼子が、よくもまあ、こんな商売がやって行けるものといつものように感心した。
「だって、嬉しいんですもの、こんなに早く帰るなんて、随分珍らしいじゃないの」
 永い時は二週間位、短くても五、六日つづけて家をける良人が、この頃三、四日位で礼子のところに戻って来るのが彼女には嬉しくてならず、これと言って彼が家に居て、何かしら用が立つ訳でもないのに、礼子は、津村が側に居てさえくれれば、それで嬉しいのであった。
「徹夜をしたので眠くて仕様がない、俺は寝るよ。寝巻を着せてくれ」
「あたしも一緒に寝る」
 家に戻れば本を読むか、原稿を書くかその二つしかしない良人が、寝ると言い出したので、礼子はもう小娘のように胸がわくわくして来て、大急ぎで良人の着ているものを、パンツまで脱がせて寝巻を着せた。
「こりゃいい、暖いな」
 今まで礼子が肌で暖めていた寝床に這入った彼は、
「何か持ち出されでもしたのか?」


 
 
 
 
〜〜『耽 溺〜性の秘本セレクション11〜』(作者不詳 監修・小宮 卓)〜〜
 
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