官能小説販売サイト 一条きらら 『秘めやかな背徳』
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一条きらら   秘めやかな背徳

目 次
蜜肌の誘い
溺れた愛戯
背徳の関係
不倫セックスの虜
秘めやかな背徳
不倫高原ホテル

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   蜜肌の誘い

     1

 今夜は、何かが起こりそう――。
 は、そんな予感がした。
 深まった秋の匂いが漂うような夜である。隣の市に住む、夫の父の敬太郎が、旅行みやげを持って訪ねて来た。
 夫はまだ、会社から帰宅していない。
 英津子の手料理の夕食を、義父と二人で共にすることになった。
 二十九歳の英津子と、六十五歳の敬太郎に、共通の話題はなく、血のつながった父娘のように仲良しというのでもない。
 特に嫁舅の不和というのはなかったけれど、英津子にとって義父の敬太郎は、やはり気を遣わなければならない存在だった。
 リビングとダイニングは、ひと続きの部屋になっている。
 ダイニングのテーブルに向かい合って食事する時、リビングのテレビをつけておいた。
 そうすれば、義父と、気を遣った会話をしなくてすむと思ったのだ。
 すると、
「うるさいから、テレビは消したほうがいいな」
 と、敬太郎は独り言のように呟くと、食事の最中に立って行き、リモコンでテレビを消してしまった。
 おとなしい英津子は、別に逆らわなかった。テレビの音声が消えた部屋は、義父と二人きりという意識を強める。
 英津子は、なるべく視線が合わないようにして、義父の言葉に相づちを打っていた。
「やっぱり、こうしてちゃんと一緒に食事するほうが、古女房と食べるより、ずっとおいしいね」
 敬太郎が、漬物の皿に箸を伸ばしながら、ニヤリとした。
「ふふッ」
 英津子はスプーンでシチューをすくいながら、小さく笑った。
「家に帰って、ちゃんと二人でご飯食べて来たって言うと、あいつ、いいしてヤキモチ妬くんだ」
「ふふふッ」
「だけどライバル心かな。最近、女房は毎週のように美容院へ行って、化粧して、着飾ってよく出かけるんだが、そのせいか、結構、若返ってね」
「お義母さんて若いわ。きれいだし」
 英津子は、姑の顔を思い浮かべながら言った。
 お世辞ではなかった。美人は年齢を取っても若く見える。
 姑の芙美は、若いころの美貌の面影を残していた。
 若さでは、英津子は姑に勝つけれど、明らかに芙美のほうが美人顔だった。
 目鼻立ちがクッキリとした、女優にしたいような華やかな顔立ちなのである。
 芙美に比べて英津子は、不美人というわけではなかった。
 丸顔に近く、目はパッチリと大きく、鼻はそう高くないが、愛らしい唇である。
 童顔めいているが、少し化粧をすると、女っぽくチャーミングな顔になる。
 可愛い女、とか、女の中の女、とよく言われる。
 色白で、やや小柄で、形のいい胸と尻をしている。
 性格は内気で、おとなしい。口数も少なかった。
 英津子のチャーム・ポイントは、そのパッチリとした大きな目だった。
 目の輪郭だけでなく、黒目が人並み以上に大きい。
 つぶらな瞳、という表現では足りない。
 何か、とても濃厚な瞳、深い瞳、神秘的な瞳、妖しい瞳――とでも言いたくなるような特徴のある目と、まなざしなのだった。
 鏡を見て英津子は、自分の黒目の勝った目が、何か異様な熱と光を帯びているような気がすることがあった。
 ――眼は口ほどに物を言い――
 という言葉を思い出させられるような、絶えず何かをうったえているみたいな濃密な光をたたえているような気もした。
「女房は、娘がいないから、義理の娘の英津ちゃんに刺激されて、若返ってイキイキしてるのは、いいことだろう」
「ええ」
 英津子は箸を置いて、卓上ポットを引き寄せ、お茶の用意をした。
「だから、いっそ、どうだろう? どこかに土地を買って、近代的で設備の整った二世帯住宅を建てて、一緒に住むっていうのは……」
「ええ……あたしは……敬一さんが、いいって言えば……」
「それとも、本当は、夫婦二人だけで暮らしたいかい?」
 
 
 
 
〜〜『秘めやかな背徳』(一条きらら)〜〜
 
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