官能小説販売サイト 中村嘉子 『女体の報酬』
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中村嘉子    女体の報酬

目 次
第一章 不倫ゲーム
第二章 獣性少女
第三章 覗かれた私生活
第四章 美人妻の目覚め
第五章 レズ嬢、陥落
第六章 快楽の合体

(C)Yoshiko Nakamura

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 第一章 不倫ゲーム

     1

「シャワーを浴びるわ」
 と、わざわざ沖田に〃宣言〃して、しょうはバスルームのドアを開けた。
 ユニット式の、ワンルームマンションとおっつかっつの狭いバスで、洋式のトイレもその中にある。だから宣言しておかないと、沖田は翔子がトイレに行ったと思うかも知れないのだ。
 トイレじゃなくてシャワーだから、時間がかかるわよ――という意味で、わざわざシャワーと言ったのである。
 そうやって、沖田をひっかけてやるつもりだった。
 ドアを閉め、翔子はすぐに、シャワーのコックをひねった。コックを全開して、盛大に湯音をたてる。
 全裸のままだから、そのまま本当にシャワーを使ってもいいのだが、使わない。
 シャワーを浴びているふりをしながら、翔子はドアに身を寄せて、耳を澄ませた。
 バスルームに翔子が入って行くとき、沖田はまだ全裸でベッドの上にいた。いかにも、射精後の虚脱感を味わっているような恰好だった。
 だが、オンがしばらくそばから離れると、彼は、ある行動にでるに違いないのだ。必ずそうすると、翔子は確信していた。不倫の関係になって半年ちかい。翔子には、沖田の性格が、すでによく判っている。
 小心なくせに、大胆な男なのだ。
 二十秒ほどそうやって耳を澄ませていると、果たして、翔子が期待していた気配がドアを通して聞こえはじめた。
 沖田が、なにやら喋っている。
 モノローグでは、ない。
 電話をしているのだ。
 誰に? そんなことは、決まりきっている。沖田の性格を考えれば、ここで電話をする相手は、ただひとりしかいないのである。
〈やったわ……!〉
 沖田が期待通りの行動にでたので、翔子はかいさいものだった。
 が、その反面、嫉妬心も、少しは湧いてきていた。半年つきあっていれば、男に対して、やはりある程度の情は育んでしまう。だから、ちょっとしい。
 口惜しいが、しかし、これからはじまるに違いない〃修羅場〃が、翔子にはものすごく楽しみなのである。
〈よし。やるわ――〉
 とうとうこのときがきた――と武者震いする思いで、翔子は、シャワーのコックを閉め、間髪を入れずに、ドアを開けた。
 すぐに、沖田のギョッとした表情が眼にとびこんできた。
 案の定、彼は、受話器を握っている。全裸のままで、なんだか情けないような恰好だ。
「あっ……しょっ、翔……」
 もつれた声を、彼は出した。
「なにしてるの?」
 わざときつい声で、翔子は訊いた。
「あ、いや……その……」
 沖田はごまかそうとする。だが、握っている受話器を、置こうとはしない。翔子の奇襲に驚いて、受話器のことを忘れているのか?
 いや、違う。忘れていない証拠に、彼はしっかりと、送話口を手で覆っている。電話の相手に、翔子の声を聞かせない配慮はしているのである。
 それを見ると、翔子の嫉妬のメーターは少しだけ上がった。
「なにしてるのよ? 誰にかけてるの?」
 ますます声をきつくして、翔子は男を問いつめる。
「あ、ああ……その……仕事の電話だよ、翔子がシャワーを浴びるって言ったから、そのあいだにと思ってさ……。シャワー、まだ途中なんだろ? ゆっくり浴びてきなさい。そのあいだに、僕は、仕事を片付けちゃうから……」
「シャワーなんか、終わったわよ」
 翔子は、意地悪く言ってやった。
 言われた沖田の顔に、絶望めいた色が浮いてきた。翔子をバスルームへ戻して、電話のつづきをしようと、図々しくも彼は思っていたようだ。
〈そうはいくもんですか。甘くみるんじゃないわよ。アタシのことを……。今まで、あんたに合わせて、可愛い子ブリッコしてあげてたんだからね……〉
 翔子は、沖田を睨みつけてやった。
 
 
 
 
〜〜『女体の報酬』(中村嘉子)〜〜
 
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