由紀かほる サドの棲む城
目 次
第1章 淫情ドライブ
第2章 サド侯爵の城
第3章 姉と妹
第4章 羞恥の乱舞
第5章 痴戯を覗く眼
第6章 足指舐め
第7章 豊熟の美女
第8章 牢獄の牝犬
第9章 淫らな懲罰
第10章 秘戯を覗く
第11章 汚辱の迸り
第12章 痺辱の再会
第13章 火照る官能
第14章 甘美なる失墜
第15章 淫らな清拭
第16章 淫ら鞭
第17章 妖かしの悪戯
第18章 圧死の男奴隷
第19章 鞭痕に塩を
第20章 便器に溺れて
第21章 奴隷市場
第22章 熱いショー
第23章 花蜜に濡れて
第24章 女の表と裏
第25章 汚穢
第26章 果実の芳香
第27章 果てしなき痴戯
第28章 歩く牝豚
第29章 狂気の城館
(C)Kaoru Yuki
◎ご注意
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。
個人利用の目的以外での複製等の違法行為、もしくは第三者へ譲渡をしますと著作権法、その他関連法によって処罰されます。
第1章 淫情ドライブ
「まだ怒っているのかい、カトリーヌ」
ハンドルを手にしてジャンは、隣りに坐る美貌のブロンド・ヘアーの妻に話しかけた。二人は昨夜から夏の休暇をどこで過ごすかでもめていたのだ。予定では北フランスのカトリーヌの田舎でジャンと二人きりになることになっていた。ところが昨夜になって急に、南フランスのアヴィニヨンに近いプロヴァンスへ行くと、夫が言い出したのである。それだけではない。カトリーヌの妹のフランソワーズと、彼女の大学の友人シャルルも一緒に行くことになったのだった。
カトリーヌは朝から不機嫌で、口もきかなかった。
「ねえ、お願いだ。何とか言ってくれよ」
「別に怒ってなんかないわ」
「本当かい?」
「ええ。それより、どこかでお昼にしましょう」
と、カトリーヌはいったが、どこかとってつけた口調で、憮然とした表情は変らなかった。不機嫌のせいだろうか、美しいブロンドの髪をアップし、薄化粧した美貌はどこか近寄り難い。丸い肩が揺れる黒いフレンチ・スリーブのワンピースに包んだ細身は、坐っていてもその優雅なスタイルはよく窺える。すっかり熟れた女体から香水と混じった芳しい香りが匂いたつ。カトリーヌ、二十五歳……。
「後ろじゃ、随分と楽しそうだな」
気まずい沈黙を破るように、バック・ミラーに映る赤い車を覗いたジャンが呟いた。だが、どこか皮肉っぽいその口調が、カトリーヌをさらに苛立たせた。
その赤い小型車を運転しているシャルルは、しきりにカトリーヌのことを気にかけていた。
「やっぱり、ジャンたちを誘ったのはまずかったかな」
「そんなことはないわ。ジャンは大喜びよ。若い頃から一度ラ・コストへ行ってみたかったって言ってたわ」
濃い亜麻色の髪を背中まで垂らしたフランソワーズは、たばこに火を点けながらさりげなく答えた。
「だけど、君の姉さんは不満らしいよ」
「彼女は海が見たいだけなのよ」
「それがわかってたら、彼らを誘わなかったのに」
「あら――」
シャルルの方へとがった鼻を向けて、
「随分と優しいのね。ふふ、知っててよ。貴方、お姉さんに気があるんでしょう」
シャルルは何も答えず、前を行く車の中にいるカトリーヌの頭の形を見つめていた。
「ねえ、私とお姉さん、どっちが魅力あるかしら」
「…………」
答えるのがむずかしかった。たしかに、このフランソワーズも若々しく可愛いが、女としての魅力ではカトリーヌにかなうはずがない。あの成熟した女の美しさ、高貴で近寄りがたい美しさは、まだフランソワーズにはなかった。
|