官能小説販売サイト 一条きらら 『愛欲の迷路』
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一条きらら   愛欲の迷路

目 次
待っている人妻
今夜もいたい
不倫愛の部屋
愛とたわむれの日々
今夜は眠れない
不倫妻のいき
秘めやかな指
熱愛の瞬間
真夜中の秘密
愛人と夫
別れの賭け

(C)Kirara Ichijo

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   待っている人妻

     1

 今夜こそ――。
 夫の手でネグリジェを脱がせられながら、はいつものように頭の中が一瞬、熱くなった。夫婦の身体の交わりは、週に一度である。恵介はそれをきちんと守っていた。夫に求められてから志津子は甘えた声を出す。自分のほうからセックスをねだるということはしなかった。
 志津子は三十五歳、夫は五十八歳だった。当然、恵介は女ざかりの妻の欲望の激しさを、察している。できれば毎晩、志津子を抱きたい。そうしないのは五十八という年齢のせいではなかった。結婚して一年だった。志津子の肉体に、新鮮な魅力を感じている。けれど妻の身体に溺れてはならないと抑制しているのだった。
 高血圧と狭心症の薬を飲んでいる夫が、友人の医師のアドバイスを受け入れてそうしているのだと、志津子も承知している。身体の交わりを始める時に、今夜こそ――と胸のうちで呟くのは、夫に甘美な感覚をもたらされるのを期待してではなかった。
「ああ、いい身体だ、まさにふるいつきたくなるような素晴らしいヌードだ」
 と恵介が、志津子の裸身のあちこちを撫で回しながら呟く。乳房から腰、尻から太腿へと肉感的な曲線が、いかにも熟れた女体といった感じだった。真っ白でキメの細かなモチ肌の、身体の隅々まで自分のものだというように、贅肉のたっぷりついた十本の指を恵介は這い回らせるのだ。
 その感触に志津子は耐えている。馴らされているからゾッとするというほどではないが、
 ――いい加減にして――
 とその手を払いのけたくなる衝動に耐えていた。恵介がのしかかるようにして唇を合わせてきた。舌を入れられると、嫌いな食べ物を口に押し込まれたみたいな不快感が突き上げてきた。その感覚は、肌に這い回る手より耐え難くて志津子は唇を離し、顔をそむけてあえいでみせた。欲情がこみあげて夫の愛撫を待ち望むように乳房を上下に波打たせる。嫌悪感を快感に見せかける演技は、自分でも感心するほどだった。
「そうか、一週間待てなかったんだな」
 と恵介が、そのことに刺激されたように息をはずませながら志津子の全身に唇と舌を這わせ始めた。耳たぶから首筋、腕や手や腋の下、そして乳房へと唇を這わせる時には、もう荒い呼吸になっている。その乱れた呼吸は、欲情の昂ぶりのせいではなかった。血圧が高く心臓が弱く太った体型の恵介にとって、不自然な姿勢を続けることが原因らしい。
 そうとわかっていて志津子は甘いうめきを洩らし続ける。悶えるように身をくねらせ、夫の頭を抱きかかえるようにして、
「いい……いい……もっと……もっと……ああ」
 と甘くせつなそうな声で口走る。この時には演技を忘れかけた。口の中に入れられた時に不快な恵介の舌は、乳首を撫で、押しつぶすように転がす時には志津子の肉体に熱い感覚をもたらした。持続する快感ではなかったが、夫を愛していたら確実に性感は上昇するだろう。
 乱れた息づかいと共に恵介の唇がゆっくり下降してゆく。舌先をすべらせるようにしながら、太腿からしなやかな脚へと移動し、足の指を一本ずつ口に含んで吸う。
「いや……くすぐったいわ」
 逆らうというのではなく甘い声で口走りながら志津子は足の先を引っこめようとした。その足を恵介はかかえこんで、それぞれの指の股にも舌先をそよがせる。二十一センチという小さなサイズの足を、恵介は気に入っていて、ねぶるのが好きだった。左右の足にそうされてから、ようやく解放されると、ヌメヌメとした感触の夫の唇が、ふくらはぎから膝の裏、太腿、内股へと移ってきた。
「もう、びしょ濡れかな」
「あ……」
 恵介が志津子の開かせた両脚を自分の肩にかつぐようにして、秘部に顔を埋めてきた。静かな室内に、恵介の荒い息づかいが激しく聞こえた。ピチャッと湿った音が、それに混じった。夫の息苦しそうな呼吸を、耳にするほど志津子の頭の中は、
(きっと、今夜こそ――)
 と、待ちかねている瞬間が、おとずれそうな気がするのだ。そのために、志津子がしなくてはならないことがあった。
 何もしないでいたら、十年も二十年も先のことになってしまうだろう。そんなには、待てない。恵介と結婚して、もう一年だった。一年が、限界なのだ。
 
 
 
 
〜〜『愛欲の迷路』(一条きらら)〜〜
 
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