官能小説販売サイト 由紀かほる 『狼たちの熱き姦奏』
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由紀かほる   狼たちの熱き姦奏

目 次
第一章 丘と林の学園
第二章 餓狼の咆吼
第三章 崩壊のとき
第四章 暴君の血脈

(C)Kaoru Yuki

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 第一章 丘と林の学園

     木陰に光る眼

 新聞を拡げると、今日もまた校内暴力の記事がでかでかと載っている。昨日は昨日で、〃校内暴力の実態を探る〃という報道番組で、最近一人の教師が重傷を負って入院したという某中学のレポートを紹介し、さらにスタジオでは親と教師の討論会が開かれて、全国に放映されたばかりだった。
 こうした報道を耳にするたびに、あさくらすみは烈しいいきどおりとともに、何か徒労に似た気持ちを覚えずにはいられなかった。憤りはマスコミの大袈裟でかたよった報道に対してであり、徒労は学校の関係者を含め、記事を読むほとんどの者が、少なからずマスコミに考えを支配されていて、ここで自分一人がどうあがいても、マスコミの力には抗しえないということだ。
 もし新聞やテレビなどが、この種の事件を報道しなかったら、今日の油をいた海に火種を落としたような、手のつけられない事件の多発は防げただろうと、香澄は思っている。
 が、いくら教師、父兄が話し合ってみても〃暴力〃の完全な鎮圧はできっこない。
 クラブやインターネットやゲーム等で発散している若いエネルギーが、〃暴力〃という形で現われても何の不思議もないといえる。これまで各地の学校で、教師という立場から離れて、不良学生たちとに接した香澄には、それがよくわかるのだった。
 まわりの者がやらねばならないことは、〃暴力〃を頭から押さえつけることではなく、若いあり余るエネルギーの発散場所を与えてやることなのだ。
 この四月から、麻倉香澄は横浜にある私立S学園に英語教師として招かれていた。丘と林に囲まれたその高校は、新築の校舎が晴れた日には美しく、各学年四組の生徒全員と独身の教師が住める寮が、校舎の裏手、丘の中腹に建てられていた。
 そんな裕福な家庭の子弟が集まった、一見穏やかな校内にも、暴力と非行の芽は育ち、悪質無法に荒れ狂っていた。
 香澄が初めてその一端に触れたのは、S学園に赴任したその日、始業式の前日のことだった。
 寮に荷物を置くと香澄は、すぐその足で校長室へ挨拶におもむいた。日当りのよい部屋では、白髪の目立つ眼鏡をかけた校長と、丸顔で頭のてっぺんから額にかけて、すっかり禿げ上がったでっぷりした体格の教頭が、コーヒーをすすっていた。
 香澄がドアをノックして中に入ると、二人は驚いたようにスラリとした肢体を見上げていたが、やがて校長が立ち上がって、
「さあ、どうぞ」
 と、向い側のソファに招いた。
「写真でお顔は拝見してたんですが、こんなにおきれいとは思わなかったもので」
 香澄にもコーヒーを差し出しながら、校長のなるが言うと、
「いやまったく。我が校創立以来、いや県下のどの学校を探しても、先生ほどの美人はいませんぞ。こりゃあ明日の始業式は大騒ぎだ」
 隣りのざかがしきりにうなずいて、不遠慮な眼差しを香澄の短いスカートから伸びる、恰好のよい脚に這わせた。
「嫌ですわ、新米ですから、あまりいじめないで下さい」
 首をすくめて見せたが、口ぶりとは裏腹に、小酒井の視線に陰険で油断のならないものを、香澄は女の直感で感じとっていた。
 ひと通り当校の教育方針やら、教師としての心構え、注意などを述べた鳴海は、
「まあ、校長の私が言うのも何ですが、うちの学校の生徒はそろって真面目で勤勉、おまけにスポーツもよくやるし、明るい子が多いですからな。新聞で騒いでる校内暴力など、よその国の出来事としか思えない。もっとも初めは何かと面喰らうこともあるかもしれないが、要は慣れることです。そして、自分一人の考えで行動しないこと、まわりの者と歩調を合わせていれば、ここほど快適な学校は他にはありませんな」
 自信たっぷりに言い、
「小酒井先生、麻倉先生に校内を案内していただけますか」
「ええ、美人のお供なら喜んで」
 小酒井に手を取られ、香澄はコーヒーの香りの漂う校長室を出た。
 校内を小酒井と歩いて、香澄はあらためてこの高校の設備の豪華さに感服した。
 広大なグラウンドはもちろん、客席の完備した体育館、五十メートル幅のプール、テニスコート、柔道場、それらを囲み、周りの住宅から視界をさえぎる高い塀――。
 肩を並べて歩きながら、小酒井は家族のことや私生活のことなど、しつこく訊ねてきた。
「麻倉先生ほどの美人なら、もう恋人は手に余るほどいるんでしょうな」
「いいえ、そんな……男の友達はいますけど、恋人と呼べる方はまだ――」
 香澄は答えながら、チラとたかざわのことを思い浮かべた。週刊誌のルポライターをしている彼とは、一度だけ寝たことがあるが、香澄は彼を恋人と呼ぶ自信がなかった。
(彼にしてみれば、あの夜のことはほんの遊びの気持ちだったかもしれない)
 
 
 
 
〜〜『狼たちの熱き姦奏』(由紀かほる)〜〜
 
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