由紀かほる 景子の淫景
目 次
第一景 羞獄の媚薬
第二景 菊蕾の蠢き
第三景 牝犬特訓
第四景 濡れる貞操帯
第五景 淫猥な衣裳
第六景 愛奴への試練
第七景 マゾ開眼
第八景 黄金の快美感
(C)Kaoru Yuki
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第一景 羞獄の媚薬
取材拒否
そこは都心にある〃テレビ関東〃の正面玄関である。
ちょうど若いアイドル・スターの出演する公開録画の番組が終って、彼らがファンたちに揉みくちゃにされながら車で脱出したあとで、辺りは午後四時前だというのに、妙に閑散としていた。
そこへ一台のタクシーが停まり、小柄ながら豊満で、小股の切れ上った肢体に、センスのよい白のスーツを着込んだ女が一人、降りてきた。
サングラスをかけてはいるが、広い理知的な額といい、鼻すじの通った高雅な鼻梁の形といい、さらに柔かい頬の線から上品な口もとといい、思わずハッと息を呑むような美貌の持ち主である。
一見したところでは、二十代前半に充分見えるが、実はすでに三十路を迎える年齢に達しているのだった。
女が玄関に入ろうとしたときである。
一人の男が彼女の前に駈け寄ってきて、カメラを構えるなりシャッターをきった。
女は一瞬立ち止まって驚いた表情を見せたが、すぐに男を睨みつけ、
「何ですか、いったい」
が、男は構わず、右左と素早く動いて立て続けにシャッターを切り、女が無視して玄関の中へ入っていくと、
「あ、ちょっと待って下さいよ。高原景子さん」
あわてて追いかけて、話しかけてきた。
「実は高原さんに恋人問題のことで、お聞きしたいんです」
高原景子は、男を一瞥したが、すぐに視線を逸らしてテレビ局の中へ入っていった。
「お願いします。一言でいいんですよ」
男の手には、いつの間にかカセットに接続したマイクが握られている。
「ノーコメントです」
そう言うと、受付でスタジオの場所を聞いた景子は、左手にあるエレベーターに向った。
そこでも、不遠慮な質問が執拗にくり返された。
「カメラマンの瀬田さんとは、結婚なさる意志はないんですか」
「――」
「籍はいつごろ入れるつもりですか」
「――」
景子は無視し続けたが、運悪くエレベーターは最上階にあった。
「もうすでに婚前交渉はあったんでしょうか」
横に立って、尚もマイクを差し出してくる男に、さすがに腹が立ったらしく、
「何ですか、貴方は。そのことについては、昨日テレビでもちゃんと話したはずです」
辺りにも聞こえるような声で言って、男を睨んだ。
しかも、その声の調子には、しつこい男に絡まれた女が困って、半ばまわりの者に助けを求めるような響きがあった。
逆に男は、景子をたしなめるような口調で、
「すみません。実は私はこういうもので、今度高原さんの結婚問題について、記事にさせてもらおうと思いまして」
言って、名刺を差し出した。
『フリー・ライター 桜井広志』
そう名刺には書かれてあった。
「週刊誌等でいろいろな記事が載せられてますが、あれは、昨日高原さんがテレビでおっしゃったようにですね、全てデタラメということなんで、是非今度は高原さんの実際に語った言葉による記事を作りたいと思ってるんです。五分でいいですから、ご協力頂けないでしょうか」
「今忙しいんです」
「じゃあ、ここのお仕事が終ったあとにでもお願いします」
「もうあのことはいいんです。何も話すことはありませんわ」
邪魔くさそうに言うと、景子は降りてきたエレベーターの中に乗り込んでいく。
桜井もまたそのあとについて乗り込んだ。
「じゃあ、スタジオに着くまで何か一言」
「――」
腹立たしさを堪えたような表情で、景子は貝のように固く口を閉ざしている。
エレベーターの中には、他に三人ほど乗っていて二人の様子をそれとなく窺っている。
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