官能小説販売サイト 田宮真 『獣欲の街角』
おとなの本屋・さん


田宮 真    獣欲の街角

目 次
第一話 けものの咆哮
第二話 疑惑の報酬
第三話 怒りの炎
第四話 獣欲の街角
第五話 鎮魂の旋律
第六話 不倫の祭壇
第七話 野望の終焉

(C)Shin Tamiya

◎ご注意
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。
個人利用の目的以外での複製等の違法行為、もしくは第三者へ譲渡をしますと著作権法、その他関連法によって処罰されます。


   第一話 けものの咆哮

     1

 雨は朝から本降りだった。
 この日、むらともひで十八歳の父、田村ひでとしの葬儀が、牛込柳町の仙林寺であった。
 家族がとどこおりなく葬儀を終えて、深大寺の自宅に帰ったのは、夜の八時過ぎになっていた。
「お母さん、疲れたでしょう。そんなに気を落とさないでください。ぼくと姉さんがついています。これからは、もっとお母さんを大切にしますから。そしてお父さんの分も長生きしてもらいます」
 居間で、喪服の帯をときはじめた母のナカへ友英がけなに、つとめて明るく装い、慰めを言った。
「そうよ、お母さま、友英と私がついているんだから、元気をだしてね。三人で、亡くなったお父さまの分も頑張りましょうよ」
「ありがとう……。今日はあいにくの雨で、二人とも大変でしたね。友英は明日、剣道の試合なのに、三日も練習がつぶれてしまって、ごめんなさいね。今日は早く床にいて、ゆっくりおやすみなさいな」
 母のナカは、日頃から病弱な体質であった。公務多忙であった父も、そのことを気遣っていたが、その父が急逝して、一家の落胆は大きかった。とりわけナカの気落ちはひどく、波子も友英も、母の健康を心配していたのだ。
 友英の父、田村英俊は、東京地検特捜部検事で、政界与党の大物政治家が絡んでいるといわれる、某大手商社の利権活動、つまり不正裏工作に関する贈収賄事件の取調べ担当検事として、しゅんれつに容疑事実をきゅうめい中、その過労が重なって倒れ、急逝したのだ。
 事実、検察庁部門でも、敏腕検事として期待されていた友英の父は、これまで政界と経済界が癒着した、いくつかの不正事件を手掛け、この手の関連事件ではベテランであっただけに司法界でも、その急逝が惜しまれていた。
 またこの事件終結のあかつきには、田村英俊は、近く高検検事への上級昇進が約束されてもいたのだ。
 応接間の方で電話が鳴った。
「あ、ぼくが出るよ」
 名門高校の三年生になった友英は、剣道が好きで、すでに三段の資格をもっている。将来は警察官になる志望をもっていた。週三回は、所轄の三鷹警察署五階にある道場にも通って、小田警部補七段の厳しい指導を受けていた。
「お姉さん、高木さんから電話ですよ。成田からだって、急いで」
 姉の波子二十二歳は、昨春上智大学を卒業して、外資系の商社に勤務している。波子には、他界した父も認めていた婚約者の高木信夫がいた。二人は近く挙式するので、その準備をしていたが、突然の波子の父の死で、式を延期せざるを得なかった。
 高木信夫は、波子の勤める商社の技術部所属で、波子と挙式すると、それを期にアメリカのミネアポリスにしゅっこうが決まっていた。二人にとっては、新婚旅行にもなるはずであったが、田村家の不幸で結婚は延期となった。けれども出向は会社決定で決まっていた。やむを得ず高木は単身出発することとなった。
 結婚のことは、いずれあちらに着いてから相談しようと、高木の方から言いだしてきた。
 波子はそれに従ったのだ。
「はい、波子です。お見送りに行けなくて、申し訳ありませんでした。あちらに行かれてもお体に気をつけて下さいね。私も近況を書きますが、必ずお便りくださいね」
「いや、ぼくこそ、葬儀に参列できなくて、すまない。お母さまにくれぐれもよろしく。じゃ」
 成田国際空港からのあわただしい電話だった。波子は切れた受話器を置いたまま、そっと涙をふいた。
(しばらくの辛抱だわ。お母さまが落ち着いたら、私も一度アメリカに行ってこよう)
 波子は、自分に言いきかせるようにつぶやくと、居間にもどった。

 翌日は快晴だった。
 小、中、高校生の剣道大会が、都教育委員会主催、毎朝新聞の後援で開催された。少年剣士たちを激励する恒例の大会で、内閣総理大臣杯をかけての個人賞、団体賞が、豆剣士や高校生たちの士気を鼓舞させていた。
 会場は中央線千駄ヶ谷駅前の東京体育館である。
 各試合は順調に進んだ。
 田村友英の高校剣道部は、評判のごとく勝ち進んで、決勝戦で相手校を倒した。また個人戦では、期待どおり、友英が次々と相手を倒して、見事に大臣杯を獲得した。去年は、団体、個人とも二位に惜敗していたので、今年は念願の優勝が目標だった。
 
 
 
 
〜〜『獣欲の街角』(田宮真)〜〜
 
*このつづきは、ブラウザの「戻る」をクリックして前ページに戻り、ご購入されてお楽しみください。
 
「田宮真」 作品一覧へ

(C)おとなの本屋・さん