官能小説販売サイト 館淳一 『淫  色』
おとなの本屋・さん


館 淳一    淫  色

目 次
人妻・被虐の宴
夫の秘密
淫蕩ナース
悦楽の密室ビデオ
堕ちてゆく歓び
肉欲デジャ・ビュ
鞭の季節

(C)Junichi Tate

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   人妻・被虐の宴

     1

 とみは、乃木坂にあるフェティッシュ・バー『エクスプローラー』を訪ねた。
 オーナーママであるマダムきょうから、店は午後の八時から営業するが、自分は六時には入っているから、六時から八時の間ならいつでもいい――というメールをもらっていた。
 どの階にも飲食店が入っているビルの、地下二階にその店はあった。「扉をノックしてください」と指示されていた。
 人の妻であり母親でもある熟女が、しばらく胸のときめきを押さえてから木製の分厚い観音扉を叩いたのは、六時五分すぎだった。
 すぐに内側から扉は開かれた。
 初めて顔を合わせる年下の美女が、黒いイブニングドレスをまとってスックと立っていた。ただでさえ長身なのにヒールの高いストラップサンダルを履いているので、来訪者への視線は見下す角度になる。
「あなたがメールをくださった紗奈恵さんね? 私がマダム杏子。ようこそ」
 冷厳な印象を受ける、はじけるような笑顔で招き入れられた紗奈恵は、扉の、きしむような開かれ具合で、何か自分の運命が暗示されたような気がした。この扉は一度くぐったら、もうもとの姿では戻れない異界への扉ではないのだろうか。
 入ったところがクローゼットのあるホールのようになっていて、左右に黒いカーテンが垂れている。
 右側のカーテンをかき分けて入ると、すぐ手前に数人が座れるカウンター。一段下ったフロアの真ん中に広いスペースをとり、三方にテーブルをしつらえた空間が現れる。
 店内の壁は石やれんを使い、天井には太い木のはりが走っている。中世の西洋の城を思わせる内装だった。
 王侯たちの居室ではなく、地下の牢獄――ダンジョンを模したものだということは、紗奈恵はマダム杏子の開いているホームページを見て知っている。
 客も従業員もいない店内はガランとして広く見えた。照明は薄暗く、四方の隅は闇に隠されている。
 壁を背にしたソファ席には、三十人ぐらいは入れるだろうか。ちょっとしたパーティを開けるほどの広さだ。
 真ん中のフロアが不自然に開けられているのは、そこでショーが繰り広げられるからだ。どんなショーかは、天井の太い木の梁から垂れ下がる、縄や、先端にかぎのついた鎖を見れば説明されなくても分かる。
 ここ『エクスプローラー』は性の冒険者――主にSMマニアを対象とした酒場なのだ。
 ホルターネックで肩と背があらわなロングドレスをまとった杏子は、カウンターの後ろに棚で仕切られたこぢんまりとしたスペースに紗奈恵を導いた。
 液晶モニターとパソコンを載せた事務机が置かれ、簡単なデスクワークが出来るようになっている。
 モニター画面にはホームページ作成ソフトが開いていて、『エクスプローラー』のホームページはオーナー自身の手で、ここで更新されていると知れた。
 紗奈恵は少し驚いた。そういう細かい作業は、誰かを雇ってやらせているのではないか、という気がしていたからだ。
 杏子は事務用の回転椅子に座り、紗奈恵はスツールに腰かけて向かいあった。なんとなく診察室の医者と患者を思わせる。
(ホームページの画像で見るより、もっと美人で、すごくセクシー……!)
 初めて生身の杏子と向かいあった紗奈恵はあらためて面接者の美貌に心を打たれた。
 ホームページの「プロフィール」欄によれば、彼女は三十三歳。
 ひとことで言えば、貴族的な東洋人の典雅な顔だちを持つ頭に、西洋人の野性的な肢体がついている。そのアンバランスさがSMクラブで売れっ子の女王さまを長く続けてきた杏子のいちばんの魅力だろう。
 
 
 
 
〜〜『淫  色』(館淳一)〜〜
 
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