官能小説販売サイト 安達瑶 『超短篇 ポルノ劇場』
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安達 瑶    超短篇 ポルノ劇場

目 次
「奇跡」のその後
田舎でハメよう
公共放送の逆襲
ヲタクの恩返し
エロメールの女
世界ウルルン滞在「され」記
テレビのそこぢから
怪奇猟奇ダーツの旅
必殺! 美容整形リフォーム
性界大分裂
不倫メールの女
俺の女に手を出すな
ロハスでセックス
雪の密室の惨劇
ポルノ初めて物語
愛の捏造メール
熱闘! セックス・スタジアム
タクシーの女
「盗作」の女
サッカーの女神

(C)Yo Adachi

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   「奇跡」のその後

  二十三歳。その年齢と彼女いない歴が完全に一致する男、えつろう。何とも冴えないこの男に、突然、幸運の女神が舞い降りた。澄んだ瞳、かよわそうなこわ、しかしながら、やけに大きなバスト。さらに、あろうことかその彼女、とてつもない淫乱だったのだッ――!?

「もう……ムリだよ。一晩に四回なんて、そんなに出来ないよ」
「嘘! 前の悦郎くんは、一晩に五回だって六回だって由美子を愛してくれたじゃない! 由美子、悦郎くんのためにエステに行ったわ。見て。肌だってキレイでしょ? 何がいけないの? 本を読んでセックスのテクだって、こんなに勉強したのに。ほら……」
 由美子はいきなりかがみこみ、悦郎の力なく横たわっているものをぱくっと口に含んだ。
 たちまち生き物のように動く舌がねろねろと幹にまつわりついてくる。玉袋の中もスタミナも三回の射精の後ですっからかん、逆さに振ってもホコリも出ないというテイタラクだが、そこはまだ二十三歳の若さで、もやもやとペニスの付け根のあたりから湧きあがってくるものがある。しかしそれは快感というより、もはや痛みに近い。
 どうしてこうなってしまったんだろうなあ。悦郎は由美子との初めての出会いを思い返していた……。

「ねえちゃん、電車の中でケータイかちかち言わせてんじゃねえよっ」
 残業のあと、車内で寝ていた悦郎は耳元の怒号にびくっと目をさました。酒臭いにおい。そして隣からは清潔なシャンプーの、いい匂い。
「あ、あの、ごめんなさい。優先席の近くじゃないし、メールだからいいと思って」
「ねえちゃんナメてんのか、ああン?」
 前に立っている男が目を据え、悦郎の隣の女性に絡んでいる。ターゲットにされた女性はおびえきり、小動物のように震えている。
 きれいに澄んだ、か弱そうな声。リスのように可愛らしいその横顔。ほっそりした身体。でもそのバストはやけに大きくて……。
 悦郎は無我夢中で立ち上がっていた。
「女の人を困らせるんじゃない!」
「ああン? やる気か、兄ちゃん」
 腕力は全然ないのに、大声を出している自分が信じられなかった。情けないことに声も全身も恐怖に震えていたが、いかにもか弱そうなこの人を守らなければ……その気持ちだけだった。
 幸い、悦郎の勇気に感じ入ったのか、見て見ぬフリをしていたほかの乗客も加勢してくれて、男は取り押さえられた。
「ありがとうございました。お礼をしたいんです。よければご住所とお名前を」
 言われるままに教えた。そしてお礼に送られてきたのはペアのワイングラスだった。
 その意味をはかりかね、悩んだ悦郎は職場のみんなに相談した。
「見た目からしてイケてないお前に女が? やめとけやめとけ。どっかで聞いた話みたいにうまく行くとは思えないし、返事なんかしたら壺とか毛皮買わされるのがオチだ」
「ペアのワイングラスなんて、処分に困った結婚式の引き出物の使い回しに決まってる」
 同僚のアドバイスをやっかみと思うには、悦郎も自分に自信が無さすぎた。なにしろ彼女いない歴と年齢が完全に一致するのだから。
 しかし奇跡は起こった。
「届きました?」と彼女、由美子から電話があり、気がついたら食事の約束をしていた。食事のあとはなぜかホテル街を歩いており、気がついたらベッドの中だった。
「おい、悦郎。その後、ミス・ワイングラスとはどうなんだよ?」
 翌日、にやにやして聞いてくる同僚に悦郎が正直に答えたら職場はパニックになった。
「あり得な〜い」
「ガセネタだろ、おい? おれだってホテルに行くまでには最低でもメールの百通ぐらいは」
 出会い系でのセフレづくりに励んでいるチームリーダーなどは気色ばんでいる。
「それを童貞クンのお前が、最初の出会いから一気にゴールにたどり着いたというのか?」
「セックスがゴールですか? 人生はむしろそこから始まるんじゃないですか?」
「セックスがゴールに決まってるだろ。なに知った風な事を言ってるんだ!」
 ひ弱な悦郎に言い返す勇気が出来たのは、童貞を棄てて男になったゆえの自信だろうか?
 この嘘つき野郎と罵倒するチームリーダーをなだめてくれたのは別の同僚だった。
「みんな。悦郎の目の下の、このクマを見ろ。一晩に二回や三回のセックスでは、ここまでドス黒くはならないぞ! 悦郎の言ってることは本当かもしれない。詳しく聞こうじゃないか。相手はどんな女性だ?」
 だから悦郎も正直に話した。
「彼女はよくCMに出てくるような美人です。スタイルも抜群でボクより幾つか年上ですが少女の面影を残したキュートさで。その彼女が迫って来たんです。『抱いて。思いっきり、メチャクチャにして』って。ホテルの部屋に入った途端、待ちかねたようにボクに抱きついてきて、ディープキスを……」
 慣れないディープキスを彼は戸惑いながらも受け入れた。彼女の舌が軟体動物のようにぬらぬらと彼の口中をうごめき、舌と絡み合った。
 と同時に、彼女の手は悦郎の股間に滑りおり、ジーンズの上から触れてくる。
「悦郎くん。もう、大きくなってきたよ。私もほら、こんなに」
 
 
 
 
〜〜『超短篇 ポルノ劇場』(安達瑶)〜〜
 
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