川本耕次 若草のいたずら
目 次
第一章 第二次性徴
第二章 煽情的な傍観者
第三章 バイブ狂いのご令嬢たち
第四章 太いサラミを根元まで
第五章 衆人環視
第六章 濫交
第七章 プレイメイツ
第八章 毛剃りの女王
第九章 カタストロフィ
(C)Kouji Kawamoto
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第一章 第二次性徴
1
そこだけ武蔵野の面影をのこした一角。ひとりの女が巨樹に縛りつけられていた。脚を大きくひろげられ、腕は身体のわきにぴったりと添い、白いブラウスに包まれた乳房をことさら強調するような、胸の上下、ふた筋の縛り方だ。
……あのひと、なんで助けを呼ばないの?
目にした瞬間、幼い沙紀はそう思ったのだ。けれど子供の彼女にもすぐ伝わるような、ごく淫靡な雰囲気があたりには漂っている。
ただの雑木林みたいに見えるけれど沙紀の家の敷地だ。通りからは離れているが、すぐ近くに家があるのだ。まだ若い女は、しきりにキョロキョロとあたりに視線を走らせているが、何も言わない。
そして、ガサッと音がして樹のうしろから男。手に刃物を持っている。
「……あっ……」
思わず漏れてしまう声を圧し殺して、沙紀は金縛りだ。だれか呼ばなくちゃ、そうだ、警察に電話しなくちゃ……。考えるだけで動けない。
「パンティだけよ、スカートとか、高かったんだから傷つけないで」
「わかってるよ」
けれどなんだか様子が変なのだ。どう観察しても、強盗なんかじゃなさそう。ごく親密げに会話を交わして、ところが行動は裏腹なのだ。
女のスカートを乱暴にまくりあげ、純白の下着を西陽にあらわにしてしまう男。手にした出刃包丁みたいな凶器で、そのパンティを破壊しはじめている。
「ああ、……いや……」
とうとう地に落ちてしまった残骸。それを泥靴で踏みにじって、男は女の股間に包丁をあてる。が、もちろん背のほうだ。
「コレを剃るからな。全部、ツルツルに剃っちまうんだ」
「いや、いや、……それだけはダメよ……」
沙紀は、カンのいいほうだ。妙にリアリティのない声ですぐに気がついた。なんてことない、これ、お芝居なんだ。
異常な光景にすっかり心を奪われて、いままで意識していなかったけれど、そういえば沙紀と二人のあいだに器械がある。よく見ればそれは低い三脚に乗せられた小さなビデオカメラだ。
むきだしになった女の股間には獰猛な獣のような陰毛が茂っている。
妙に生々しく白い下腹部に、つやつやと黒い陰毛。見てはいけないものを曝して、女は悶えている。けれど隠すすべはないのだ。出刃包丁を地面に突き立てた男は、その陰毛をいとおしげに撫でさすり、何かをささやいていた。
それから、手にしたスプレー式シェービング・フォームを。黒かった恥毛があっという間に白く染まってしまった。
ゆっくりと刃を滑らせてシェービング・フォームごと陰毛を剃りあげていく。
沙紀は、ただ呆然と見ていたわけではない。そのころにはすっかり我に返って、木陰にしゃがみこんでいた。隠れてそれを眺めていたのだ。
男と女は、しばらくしてその作業を終えた。もちろん女はそれに協力しているのだ。でなければこんなにうまく剃れない。痕跡すら残さずに剃りあげられた恥丘は、西陽に輝いている。しばらく満足げに眺め、おもむろにそれに顔をよせて、男が舐めはじめる。そして、縛られた女がそれを喜んでいるらしいのが、十二歳の少女、光澤沙紀にはショックな記憶として残ったのだった。
2
オナニーを知ったの、いつだったかなあ。
……十七歳になった沙紀はときどき考えることがある。まだ一年はたっていないはずだ。けれど、その行為はずっと昔から慣れ親しんだことのように自分から離せないものになってしまった。
友人が教えてくれたのだ。『おしっこの出る穴のちょっと上よ。そこをコスるとキモチイイの』『枕を股にはさんで力入れるといいわよ』なんて、いろんな方法があるらしい。何日間かはそれでも我慢して、試したりしなかった。けれど、それも一週間が限界だったような記憶がある。
生まれてはじめてしたオナニーのこと、まだ良く覚えている。
それはお風呂場だった。
いつものように身体を洗っているうちに、友人に秘密めかしてささやかれた言葉がよみがえってきたのだ。『オシッコの穴のちょっと上』。まるでそれは呪文のようだ。耳について離れない。脳裏をグルグルまわって、沙紀を占領している。
……ちょっとくらいなら。
別に害ではないらしいし、みんなしていること、もう高校三年の自分だけしちゃいけない理由はないはずだ。
濡れてぺったりと溝のあたりに張りついた恥毛。洗っていた最中だから石鹸にまみれて滑る。女の子なんだからそこは良く洗わなくちゃダメよ……という母親の教え、けれどなんとなく怖くて、正直、溝の内部にまで指を忍ばせたことなどない。だから、ひどく怖かったし興奮もしていた。
はじめは、どうってことなかった。
くすぐったいだけだ。むず痒いだけのこと。……なんだ、この程度か。と、たかをくくってしまった沙紀、けれどその痒いみたいな感じ、決してイヤなものではない。本当は痒いというのとちょっと違う。痒ければ掻けばおさまる。けれどこの痒みは、指でコスればコスるほど激しくなってくる。
だったら止めればいいようなものなのに、続けてしまう。
ちょっと困ったなあ……と素直にそれを受け止めていただけだ。それだけだったはずなのに、気がつくと『キモチイイ』と認めざるを得ない状態になってしまっていた。
「……沙紀ちゃん、いつまで入ってるの、ノボせるわよ……」
母の言葉にハッと気がついたのだ。ずいぶん長い間、その行為に溺れていたらしい。
「はあい、いま出るから」
声が震えていたかも知れない。ずいぶん動揺していたのはたしかだ。けれどそれだけに中断させられてしまったオナニーは心残りだった。
二度目、三度目のオナニーなんて覚えてない。たぶん、その直後だろう。でも、一度知ってしまった行為は、いつしか身に染みついたものになっている。
そんなわけで、今でも沙紀は風呂場でオナニーするのが癖だ。集中できないきらいはあるが、石鹸の泡の滑りはキモチイイ。でも、過ぎるとピリピリ痛くなる。
そして、今夜も邪魔されないしまい湯、そろそろ日付が変わろうとしている頃。沙紀は脱衣場に立つのだった。
……そうよ、これだけオトナなんだから、オナニーくらい当然よ。
鏡の前に立って、そう考える。
第二次性徴は順調だ。乳房のふくらみは女らしく同級生のあいだでも大きいほうだし、といってもちろん重力に負けるわけでもない。恥毛の陰りはまだ薄く、溝が透けてしまう。これはちょっと嫌いだ。中途半端に隠された劣情。いっそなければ、オナニーに耽る淫乱な自分があらわになるのに。
腰の張りもある。クラスメートのお尻はダブついていたり、子供みたいに小さかったりするけど、沙紀は自分の張りのある腰つきが好きだ。けれど残念ながら本当のお尻の姿を肉眼でよく見るのは不可能だ。
オトコたち、どう見ているのかしら。この、あたしを。
……なんて蓮っ葉な遊んでる娘みたいなセリフを心の中でつぶやいたりして、けれど実のところ厳格すぎる名門女子校の沙紀にとっては、異性といえば学校の教師と駅員くらいのものだ。
だから、いつまでたってもオナニーはオナニーのまま自己完結。でも、とりあえずそれでもいいか、と思う。やっぱりオナニーはキモチイイから。
儀式はまず、鏡の前でのポーズから始まるのだ。こうして自分の姿を確認、セーラー服に隠されていた『女』の自分を取り戻すことから。それから湯に浸かって妄想を育てる。
セックスをする自分の姿、相手の顔はいつも漠然としてさだかではない。けれど筋肉質の肉体に息もできないほど抱きしめられて、いろんな淫らなことをされる。
それから、身体を洗う。洗いながら、ひとつひとつのパーツを確認。小さな乳首、ピンクで、触れると敏感に勃ってくる。
乳房のボリューム。石鹸で滑りながら、ちょっと力を込めて揉むようにすると、男の乱暴な愛撫に身を任せているみたいな気がしてくる。お尻はすべすべしている。丸くて弾力がある。
爪先までぬるぬると愛撫のような洗浄作業。だって今夜はもう、みんな寝静まってしまった。邪魔されずに好きなだけオナニーに耽るのだ。
そして、淫らな欲望を隠した溝。
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