官能小説販売サイト 一条きらら 『秘夜への誘い』
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一条きらら   秘夜への誘い

目 次
第1章 年下男の熱い昂まり
第2章 二度目は持参バイブで
第3章 背徳のエクスタシー
第4章 レズにひらく花唇
第5章 不倫テープで火照る女芯
第6章 レイプ魔の熱い樹液
第7章 夜明けまでの甘美な快楽
第8章 陶酔の後のプロポーズ

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   第1章 年下男の熱い昂まり

     1

 桜木麻衣子は美容師である。
 JR中央線・武蔵境駅前にある美容室《パープル》に勤めている。
《パープル》はチェーン店であり、マンションの一階フロアを借りた、比較的大きな店である。
 店内は、白と黒で統一された、シンプルでモダンな装飾がほどこされている。働いている美容師は七人。ほかに美容師の資格を持たないインターンが二人いる。
 店長はチーフと呼ばれており、上原賢司、三十六歳。
 麻衣子は、チーフ・アシスタント、つまり副店長で、二十九歳という年齢のため、ほかの者たちよりベテランなわけである。
 高校を卒業した麻衣子は、美容専門学校に通い、二年で卒業して、都内の美容院でインターンとして実務経験を積んだ。
 美容師国家試験に合格したのが、二十一歳の時だった。
 麻衣子は、一流のヘア・デザイナーになる夢に燃えた。三十歳までに、自分の店を持とうと決意した。
 ところが――。
 自分の店を持つには、まず資金が要る。経験や腕だけではだめなのだった。
 その資金を貯めるには、いくら真面目に仕事に励んだだけでは無理で、美容師以外の仕事をしなくてはならない。短期間で大金を貯めるには、水商売がある。その中で、手っとり早いのはピンク産業の仕事。
 麻衣子は、身長百六十二センチ、体重五十キロ、バスト八十八、ウエスト五十八、ヒップが八十五。中肉中背で、プロポーションはとびきりいいというわけではないが、美しい方である。
 顔も、やや目尻の吊り上がった二重瞼の黒い瞳が、ちょっと小悪魔的で、エキゾチックな美人といえる。
 性格も明るくて社交的で、水商売、ピンク商売に向いているといえるかもしれない。ただ麻衣子は、男に対して人一倍好き嫌いが激しい性格だった。
 その男の内面を知る前に、容貌に対しての生理的感覚的な好き嫌いが激しいのである。
 電車に乗り合わせた隣の男が嫌いなタイプだと、全身に鳥肌が立ってしまう。席を移ってからも、その生理的嫌悪感はなかなか消えない。
 美容院には、男の美容師も何人かいるものの、ほとんど女の職場だから救われている。
 そんなふうだから、たとえお金を貯めるための仕事と割りきってみたとしても、ピンク商売はおろか、どんな客にもニコニコしなければならないホステスなど、とても務まりそうにない。
 実家はお金持ちではないし、宝クジも当たりそうにない。
 月に百万ぐらいくれるパトロンなども、できそうにない。
 そうこうするうちに二十五歳になり、二十七歳になり、とうとう三十歳の手前まで来てしまった。もっとも、二十五歳ぐらいから、夢はしぼみ始めていた。
 結婚願望はあまり抱いたことがない。洗濯、料理、掃除が大嫌いなのである。夫に束縛され、子供からお母さんなどと呼ばれることを想像すると、ゾッとする。
 けれども、年を重ねれば、そのうち心境の変化で、人並みに結婚したくなるかもしれない、と考えていた。
 ところが、いつまでたっても、結婚する気は起こらない。
 美容師の仕事は好きである。
 男友だちと遊ぶのも楽しい。セックスも嫌いな方ではない。
 三年前ぐらいから、麻衣子は、アルコール依存症と人から言われるようになった。アル中の一歩手前である、と自覚もしている。
 週二日を除いて、毎晩飲む。
 ウイスキーのボトル一本を、二晩で空ける。
 水割りではなく、オンザロック。
 だが、決してヤケ酒ではないのだ。
 一流ヘア・デザイナーになる夢や、店を持つ夢は、とうていかなえられないとわかっても、麻衣子の性格を歪ませたりはしなかったからである。
 アルコールが体内に回るほどに、宙に漂うようなふわふわっとする感じが、何ともたまらない心地よさなのだ。
 まるで、雲の上に寝そべっているような心地になってくる。
 延々と続くエクスタシーを感じているような肉体的快感さえ感じるのだ。
 酔って泣いたりわめいたりする酒ではなく、夢見るようなまなざしで、独りもの想いにふけることもあるが、いつもは友だちと明るく喋ったり、歌ったり踊ったりする陽気な酔い方だった。
「麻衣ちゃんの恋人はお酒だものね」
 と、同僚やチーフの上原が冷やかす。陰では、麻衣子がいつアル中になるかと心配しているらしい。
 けれども、麻衣子はちゃんと、アルコール依存症についての本や、アル中患者の更生記録の本など読んでいて、アル中にならない絶対的な自信がある。
 それは、毎日、決った時間、きちんと仕事をすること。それを守ることなのだった。
 キッチンドリンカーになる主婦は、家事を強制されているわけではなく、手を抜こうと思えばいくらでも抜けるし、アルコールの壜に手を出す時間とチャンスが一日のうちにたっぷりある。そのため、重症になっていくのである。
 麻衣子は、美容室《パープル》に朝九時から夜七時まで、周囲の目のある中で、きちんと働いている。この三年間、一日も休んでいない。だから、アルコール依存症にならないと、楽観しているのである。
 
 
 
 
〜〜『秘夜への誘い』(一条きらら)〜〜
 
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