官能小説販売サイト 一条きらら 『人妻たちの午後』
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一条きらら   人妻たちの午後

目 次
人妻だって恋をする
ときめきの出会い
初めての不倫
揺れる心
二度目の密会
夫に燃えない肉体
悦楽の熱い波
夫への疑惑
昼下がりの愛
衝撃の不倫離婚
朝までの燃える愛
ブレクファスト
後悔と嫉妬
欲望の火照り
不倫の終わり
とろける花芯

(C)Kirara Ichijo

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   人妻だって恋をする

     1

 陽射しの強い夏の昼下がりのコーヒーショップ。
 音楽はかからず、店内に客の姿はまばらだった。
 吉祥寺の繁華街にあるその店で、神崎麻里子は二人の主婦とお喋りをしていた。
 三人とも分譲マンション《メゾン吉祥寺》の住人。デパートで買い物をしてきた帰りである。
「そうそう、安田さんとこ、離婚するらしいわよ」
 と、三人の中で一番若い二十八歳の松井美香が、好奇心に満ちた表情で言った。
 六〇一号室の安田夫妻は、美香の家の隣室である。
「本当?」
「あのご夫婦が?」
 と麻里子と岸田裕子が、驚いた顔で美香を見た。
「ええ、このあいだエレベーターの中で京子ちゃんと会った時、私のうち引っ越しするの、って沈んだ声で言うの」
「まあ」
「それで?」
 カーリーヘアの美香は、アイスカフェオレをストローで一口飲んでから、
「お父さんとお母さん、別々に暮らすの。私はお母さんと一緒に暮らすんだけど、って……」
 と麻里子と裕子の顔をかわるがわる見て言った。
 麻里子は、あまり付き合いのない安田夫妻の顔を思い浮かべた。どちらも三十代後半のようである。
「離婚だなんて、勇気があるわね。子供さんまでいるのに」
 と麻里子が言うと、裕子が、
「京子ちゃん、うちの子より一つ年上の中二だったわね。でも、どうしても別れなくちゃならない事情があったんじゃないかしら」
 と同情したように言った。
「そう、その事情なんだけど、あたしはきっと、奥さんの不倫が原因だと思うの」
「本当?」
「ええ、きっとそうよ」
「お隣に住んでると、そんなことまでわかるの?」
 麻里子は苦笑した。
「だって、あの奥さん、よく外出していたじゃない?」
「しっかりお化粧して、服なんかもけっこう派手だったわね」
「そうそう。きっと男性がいたのよ。いつか、廊下で夫婦喧嘩してたこともあったわ。夜だったけど。そしてハイヒールの音が、エレベーターの方へ去って行ったの」
「ドアの内側で耳を澄ましていたの?」
 麻里子と美香だけの会話になった。
 裕子はなぜか、テーブルの上をぼんやり見ている。
「そんなことがあって、主人と時々噂してたのよ。あの夫婦、もしかしたら別れるんじゃないかって」
「本当に奥さんの不倫が原因かしら」
「夫と子供を捨てて、不倫に走っちゃうなんて、ねえ? 妻にとって、家庭は大事だわ。軽い遊びぐらいにしておけばよかったのよね」
「そうねえ」
 その時、裕子がふいに、
「人妻だって、恋をするわ」
 と呟くように言った。
 麻里子と美香は、思わず裕子の顔を見た。
 二人の視線を意識しながら裕子は、
「実はね、私もちょっと悩んでいるの」
 と深刻そうな顔つきで言う。どうしたの? 何を悩んでいるの? と二人が彼女の顔を心配そうに覗き込んだ。すると、裕子は意外なことを言った。
「主人と別れようかどうしようかって」
「まあ……」
「ほんとう?」
「ええ、もしかしたら私たちも、安田さんご夫婦みたいに、離婚するかもしれない」
 麻里子と美香は顔を見合わせた。
 マンションの主婦たちの中で、三人は親しく付き合っていたが、裕子がそんなことを言い出すなんて、思ってもいなかったのである。
 裕子は三人の中で一番年上で、三十三歳だった。
「ねえ、もしかしたら、裕子さんの場合も、やっぱり不倫が原因?」
 美香が好奇心にみちたまなざしで、裕子に質問した。すると、
「ご想像にまかせるわ」
 と裕子は、溜息をつくように言うのだった。
 麻里子と美香は、また、顔を見合わせた。
 
 
 
 
〜〜『人妻たちの午後』(一条きらら)〜〜
 
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