川本耕次 処女太り、恥毛付き
目 次
ごきげん双児ちゃん
処女太り、恥毛付き
カメラ小僧版・白鳥の湖
男はせんずり、女はまんずり
エッチのABC
バージンオイルのお姫さま
春風劣々
猫の舌の娘
海辺の金魚娘
(C)Kouji Kawamoto
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ごきげん双児ちゃん
黒い、小さな落下傘みたいなスカートがフワフワっと降りてきた。
「ねえ、ララあ、……どこ行こうか? 原宿、それとも青山?」
「やっぱし青山じゃん。原宿なんてガキっぽいよお」
にぎやかな少女たちは、やっぱり黒いパンティストッキングをはいている。でもって、その下は白。ムチムチした股間のパンスト地は、お尻のかっこも露骨に伸びきって、きわめて生々しくって嬉しいかぎり。
「お、おい」
階段の踊り場で、となりの友人、中野は口ごもった。
「うん、わかってるって」
おんなじのが双つ並んでいるから、ボクにもすぐわかるって。
「廣小路さんでしょ? 廣小路ララさんとルルさん。合わせてラルさん」
きょとんとした可愛い顔をして、少女たちが降りかけた階段で立ちどまる。
「はじめまして。ボクは同業者でカワモトコウジっていうんだけど、あの、……こいつがサインを欲しいっていうもんで」
ところで、廣小路姉妹ときたら、ミニスカートの中身にも負けないくらい可愛い。TVや雑誌で見るより、ナマだとまた一段と可愛くって、つい、となりの中野と並んでボーッとしていたら鋭い声が聞こえてきた。
「なに? ファンのサインだったらお断りしてますのよ。キリがないから」
これはまた、地味〜な感じのオネーチャンだった。
「そこをまあ、なんとか。なんせ同業者だもんで」
「へえ、アナタも小説家?」
「いちおう。主にポルノですけどね」
そのネーチャンは値踏みする眼でジロジロとボクたちを見る。
「知らないわねえ。そんなヒト」
……冗談じゃねえ、こっちだって知らないよ。廣小路姉妹というのは、少女小説の売れっ子作家なのだそうだ。ボクはこの中野に聞いてはじめて知ったんだけど。
「まあ、知らないほうが無難でしょう」
言い返してやると、なにがオカシイのか、双児姉妹がキャハハと無邪気に笑った。
「オッモシロソー。ねえねえ、エッチなんでしょ? ポルノって」
「あったりまえじゃん、エッチじゃなかったらポルノじゃないわよ」
「どの程度エッチなの? これっくらい?」
両手をいっぱいに拡げたりして、まったくもって、憎めない娘だった。
が、このオンナは違う。
「とにかく、急ぐんですの。……さっ、ララ、ルル、行きましょ?」
「はあい」
この娘たち、ベレー帽もブラウスも、やっぱり黒い。なんか、実存主義のフランス娘みたいなかっこだ。
「オバサンに聞いてやしないよ。アンタこそ、誰なの?」
いささかムッとして、ボクは言った。
廣小路ラルといえば、ブームを呼んでいる少女小説の作家としてTVにも、クイズ番組のゲストやら人生相談(!)の回答者やら、出まくっている。
週刊誌のグラビアに『作家、処女作執筆中』として華々しく登場、その処女作、中学三年で書いた『うっふんハイスクール』がヒットして以来、二年で長編が二十作、計三億円売ったという超ヒットメーカーだ(そうだ。ボクは知らなかったけど)。
姉がララ、妹がルル。だから合作のペンネームがラルというわけ。けど、こんなネーチャンは知らない。マニアの中野も知らないと首を振った。
「あたしはマネージャーですッ。とにかく急ぎますんで」
けらけら笑っている美少女たちを引きたてて、オバサンはそそくさと行ってしまう。
「もう、怒らせちゃったじゃないか。せっかくサイン貰えると思ったのになあ」
中野は少女小説マニアだ。トレンドは今や、少女漫画から少女小説に移ったというのが、美少女マニアの合言葉らしい。だからオトコにだって、ファンがいる。この阿呆みたいに。昔から言うんだよ、『美少女は美しい。けれど美少女を好きなヤツが美しいとは限らない』とね。
中野は、最新作『恋のラベンダー・ピンク』(なんつう悪趣味なタイトルだ?)を手にして泣きそうな顔だった。
「まあ、心配するなって。オレがぜったい、サインを貰ってみせるから」
とにかく、なぐさめる。そう、オレさまにはまだ出していない切り札があったのだ。
廣小路ラルの部屋は、ボクのマンションの向かいである。
しかも、ボクときたら覗きがだいすき。カメラに使う超望遠レンズにアタッチメントをつけては、毎晩、覗いている。
向かいのマンションはぜっこうのターゲットで、全裸でヨガにはげむ銀座のホステスとか、毎夜ちがったオトコを連れこむジョシダイセーとか、お得意さんがいっぱいあった。
あの双児も、何を隠そう、お得意さんの一人、いや、二人か。
カーテンもしめないでファッション・ショーをする。パンティからコートまで、とっかえひっかえ。陰毛が薄いことまで、知ってる。知らなかったのは二人が弱冠十六才の、売れっ娘小説家だったという事実くらい。
だって原稿を書いてたことなんかないし、それどころか本を読んでいるところさえ見たことない。文盲じゃないかと思っていたほどで、一方、マネージャーと名乗ったオンナは、いつもワープロに向かっている。
いっしょに住んでいるのだ。
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