官能小説販売サイト 山口香 『淑やかな狩人』
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山口 香    淑やかな狩人

目 次
第一話 友里の唇
第二話 有伊の唇
第三話 直美の唇
第四話 玲奈の唇
第五話 聖美の唇
第六話 秋子の唇
第七話 杏理の唇
第八話 朋代の唇
第九話 諒子の唇
第十話 映子の唇
第十一話 紀佳の唇

(C)Kaoru Yamaguchi

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   第一話 友里の唇

     1

 赤坂の一角にある料亭「満夕」の離れ座敷は二間続きである。
 奥の部屋にはダブルのふとんが敷かれ、その上で、全裸の男女が絡み合っていた。
「ああ……もう、何もかも忘れてしまいたいわ。月野さん、あたしをメチャメチャにしてっ〜ん」
 女は下から男に抱きつき、柔らかい女体をのけ反らせた。
 女はいまマスコミで話題になっている大谷友里、三十三歳である。彼女の父親は往年の大スターの大谷明英であり、母親も一時期女優として活躍していた白井由美江であった。
 友里は一人娘であり、両親が俳優であったため、三歳の頃からテレビドラマに出演し、高校時代に化粧品メーカーのコマーシャルガールに採用され、一躍人気アイドルタレントになった。
 そして十年前、人気歌手の西条ひろみと電撃結婚をし、マスコミの話題を独占したのだった。
 夫となった西条ひろみは、友里との結婚半年前に、付き合っていた松田聖美と別れ、その時の破局会見の席で、
「生まれ変わったら、一緒になりましょう、と約束して別れました」
 と述べていたのだった。
 相手だった松田聖美は、西条ひろみと付き合うまでに何人もの芸能人とスキャンダラスな噂話を流していた。
 そのために西条ひろみと松田聖美の破局に対し、マスコミは、松田聖美に新しい恋人が出来たため、西条ひろみが捨てられたのだ、と騒ぎたてた。
 その破局会見の二週間後に、西条ひろみと友里はドラマで共演し、収録後、何人かの共演者と食事し、それがきっかけで二人は付き合うようになり、半年後に、結婚を発表し、マスコミを騒然とさせたのだった。
 二人の結婚から四カ月後に、松田聖美も大物男優の神石正樹と電撃結婚し、こちらもワイドショーなどを賑わした。
 友里は西条ひろみと結婚してからは女優業を中断し、二児の母親として主婦業に専念した。その間に少しずつ書き綴った、西条ひろみとの新婚生活の思い出が、エッセイ『愛の遠方に……』として出版され、ベストセラーになった。
 そんな西条ひろみと大谷友里夫婦に破局がきた。二週間前に発売された西条ひろみのエッセイ「父親として」で離婚に至る経緯が述べられていた。
 マスコミは、エッセイが発売されるまで、まったく寝耳に水だった。
 離婚の理由は自分の複数の女性との不倫である、と西条ひろみはエッセイの中で書いていた。
 マスコミは二人の記者会見を求めた。しかし、西条ひろみは所属事務所を通して、
「エッセイに書いたとおりですので会見はいたしません」
 と伝え、友里の方は、
「離婚は夫婦だった二人のプライベートな問題。時期がくるまで話せません。いまは静かにしておきたいのです」
 と応じたのだった。
 二人の離婚にマスコミは騒ぎはじめた。二人の離婚の一年前に、松田聖美と神石正樹も離婚していたため、西条ひろみと松田聖美がふたたび付き合いはじめたのではないだろうか、と考えてもいたのだった。
「何もかも、忘れさせてあげるよ。だから何も考えずに、燃えることだね」
 月野は友里の首から肩にかけて、キスマークをつけないように気づかいながら、口唇愛戯をくり返した。そしてブヨブヨした胸のふくらみに顔を伏せ、肉の感触をたのしみながら、乳首の尖りをチロチロと舌先で転がすようにして舐めつけ、口に含んで柔らかく吸いたてた。一方の胸のふくらみは下から押し上げるようにしてつかみ、強弱をつけて揉みたてていった。
 月野和則、四十四歳。首都テレビ局の、制作局第五制作部の部長兼プロデューサーである。
 ちなみに首都テレビ局の制作局は、
 第一・外国物、共同ドキュメント
 第二・国内物、記録ドキュメント
 第三・ワイドショーなどの報道物
 第四・ドラマ、映画関係
 第五・歌謡番組やトークショーなどのバラエティの五つの制作部と、制作連絡部と制作管理部の、七つの部署から成り立っている。
 しかしこれらはあくまでも単純な部署分類であり、実際には一つの番組を制作する場合、二つの部、または三つの部などと共同することが多い。一般的に「特バン」と呼ばれているものなどは、ほとんど共同制作である。
 また、プロデューサーとは演出用語であり、実際の仕事としては、番組制作における企画立案から完成までの予算、進行などのすべての責任者である。
 ちなみにディレクターとは、直接の演出者であり、映画、ドラマなどでは監督にあたり、スタジオでは指揮を執り、演出指導などを行う者である。
 そのディレクターの下で働くのが、通称ADと呼ばれるアシスタントディレクターであり、出演者やスタッフの身のまわりの世話をするのであった。
 第五制作部の部長兼プロデューサーは、いくつかの番組を直接担当しているが、その中で飛び抜けて高視聴率なのが、毎週土曜日の午後九時から九時五十四分までの歌謡番組〈ヒットソングアワー〉であった。
 歌謡番組の視聴率が低迷している昨今、この月野のプロデュースしている〈ヒットソングアワー〉だけは、三十パーセント前後を維持し続けていた。そんな高視聴率を保ち続けている大きな要因は、日本だけでなく、外国のレコード業界、放送業界などからの音楽情報を取り入れ、その中でも特にアイドルに関する個人情報収集に力を入れ、これまでの聞かせる歌から見せる歌に徹したことであった。
 また、この〈ヒットソングアワー〉は毎回生本番であり、多彩な出演者が人気を呼んでいて、その中での特別ゲストには歌手に限らず、芸能界のあらゆるジャンルの人々を招いて、たのしいトークショーを行ったりしていた。大谷友里も、その特別ゲストの一人だった。
 
 
 
 
〜〜『淑やかな狩人』(山口香)〜〜
 
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