官能小説販売サイト 矢切隆之 『世紀末・性のワンダーランド〜日本の超変態系性現象〜』
おとなの本屋・さん


矢切隆之    世紀末・性のワンダーランド〜日本の超変態系性現象〜

目 次
はじめに
第1章 フェティ・ワールド
第2章 SMワールド
第3章 同性愛ワールド
第4章 近親相姦ワールド
第5章 鬼畜ワールド
第6章 ロリコン・ワールド
第7章 痴漢ワールド
第8章 フィギュア・ワールド
第9章 ピアッシング・ワールド
第10章 性転換ワールド
第11章 スワッピング・ワールド
第12章 非定型ワールド
第13章 性風俗ワールド
おわりに

(C)Takayuki Yagiri

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   はじめに

 人間の性意識における正常と異常とは、どのあたりで線引きするのであろうか。病すれすれの場合でも、社会生活が営めれば生活できる。
 現代とは一言でいえば、倒錯の時代。
 性の世界においても、好み・趣向が細分化している。かつては変態といわれたSMも市民権を獲得した。さまざまな性現象を展望するとき、あたかも顕微鏡で微生物群を観察するがごとき、興味が湧く。
 かつて明治の時代には、性にまつわる珍風俗などを、ひねもすコレクションした宮武外骨のような奇人がいたものだが、現代では、そんな奇特な人物もいなくなってしまった。そこで、外骨にならって(?)現代のあらゆる性現象を網羅しようと企てた。この本一冊で、世紀末日本の性現象のアウトラインが俯瞰できるとすれば、著者の目的は達したことになる。


 第1章 フェティ・ワールド

 フェティはフェティシズムの略。呪物崇拝、霊物崇拝などと訳される。ラテン語の「人工的」を意味するファクティティウスが原型で、ポルトガル語のフェイティソ(護符あるいは呪物)から由来しているとされる。宗教学者のド・ブロスが比較宗教学にとりいれたことから、広くこの言葉が知られるようになった。

物品崇拝

●セーラー服
 制服フェティの中でも、セーラー服マニアが圧倒的に多い。
 もともとセーラー服は、十九世紀後期にイギリス海軍が水平服として採用したものだが、前がVネックで、後ろが四角い襟(セーラーカラー)になっているのが特徴。その後、欧米でも子供服や婦人服にこの襟がとりいれられ、わが国では、一九二一年(大正10)に福岡女学院が採用し、やがて昭和初期には全国の女学生に流行した。
 思春期の発達段階の少女の肉体をつつんでいるという連想から、セーラー服ウオッチャーを含めれば、セーラー服フェティは相当数にのぼる。このようなセーラー服ファンを含めた人々の好みを反映し、ビデオ、コミック、ポルノ小説の分野でもセーラー服の王座は揺るがない。
「夏服のセーラー服をかすかに盛り上げる胸の膨らみは、あくまで控えめで恥ずかしげな感じがする。滑らかな首筋から緩やかなカーブを描く肩のラインは優雅そのものだ。しかし、白い色のセーラー・リボンをいじるほっそりした指先と、微妙な陰影を作り出す鎖骨には、浜島もゴクリと唾液を飲むこともしばしばだった。アイドルである前に、生徒である前に、葉澄はひとりの女なのだ」(塚原尚人「セーラー服『剥く』」)
 この他の制服フェティとして、スチュアーデスの制服、看護婦の白衣、銀行などのOLの制服が代表的なもの。数年前まで大人気だったスチュアーデスの制服は、最近めっきり人気が凋落した。それに代わって、婦人警官フェティが浮上したとの声もある。

●パンティ
 西洋の女性がパンティなどの下着を着けるようになるのは、十九世紀、ヴィクトリア朝の後期からである。
 フェティが欲しがるのは新品ではなく、着用済のもの、あるいは脱いだばかりのパンティである。女性器に密着した二重布部分に分泌のシミがあり、匂いが保存され、あるいは恥毛の付着があるものが人気。さらに聖水(尿)から、黄金(大便)の痕跡のあるものがパンティ・マニアの垂涎の的。数年前、公衆電話のボックスで電話をかけていた女子高生を襲い、パンティだけを強奪した事件があったが、パンティ・フェティにとって、温もりと匂い、さらに分泌物のシミが付着した下着が宝物なのである。
 また、大人の玩具店では、股間がファスナーで開くようになっているもの、また、股間に豆ライトが点滅する仕掛けの趣味的な下着も置かれている。近年では若い女性の間で、パンティという響きのいやらしさを嫌う傾向に向かっている。
 パンティ・フェティが待望するのは、何日も穿いて秘唇の匂いまでがしみついたものであり、したがって大人の玩具店では「三日もの」「五日もの」など、ウイスキーのように穿いた日付が記載されている。また、かつては下着マニアは男性が女性のものに固執するのが特徴だったが、現代では、女性が男性のブリーフなどに固執し、ベッドの中でその男性ブリーフを手にオナニーする場合もみられる。
 なお、現代の若い女性は「パンティ」という響きが卑猥だとしてこれを斥け、「Tバック」「ショーツ」「ハイレグ」あるいは「パンツ」と呼んでいる。

●ブラジャー
 乳房を支え、胸の形を美しくととのえる下着。バンドー型とよばれるショート丈のものから、ウエストまでのロングブラジャーがある。ブラジャーの語源には「小さな胸衣」の意味がある。女性のシンボルである乳房をつつむ下着だけに、ブラジャー・フェティは多く、彼らは少女から人妻までのブラジャーを手にすれば、芳しいミルクの匂いを嗅ぐのである。

●ブルマー
 少女がパンティの上に穿くブルマーは、フェティの垂涎の的。綿製のブルマーは運動した後の汗を吸い込むし、体臭がしみ込んでいるのがいいようだ。往年の女学生が穿いていたダボダボのブルマーは「提灯ブルマー」と呼ばれたが、現代では天然記念物になった。現代の女子(小学生から高校生まで)が穿いているのは木綿製で、色は紺色。腰に密着したタイプのものが多い。某氏(会社員・27歳)の話――。
「女子高の運動会には必ず行ってます。なにより女子高生のブルマー姿を見ているだけで勃起してしまう。汗の滲んだブルマーなら、給料一か月分ぐらいなら、払ってでも欲しいです」

●キャミソール
 袖なしで、肩紐がついた腰までの下着。シースルーなどの布地だと、女体の曲線がSの字に透けるので、眺めるだけのフェティもいる。

●ガーターベルト
 SMクラブの女王様は、ガーターを腰に巻き、サスペンダーでストッキングを吊っている。さらに膝までのブーツを穿いている。西洋の娼婦を連想させるこのコスチュームは、手に鞭を持った女王様を連想させるところから、マゾ系の男を痺れさせる。

●恥毛
 マリリン・モンローの恥毛を帝国ホテルの浴室で蒐集した某氏が話題になったことがあるが、恥毛マニアは意外に多い。毛髪以上に、女体の神秘の部位を飾る物だけに、匂いから縮れ具合までを楽しむ。愛する女の恥毛を財布に入れておくと、金が溜まるという迷信もある。無理やりに手に入れようと剃毛する場合もあるが、これはSMワールド「剃毛」の項目に詳述。

●毛皮
 ザッヘル・マゾッホ(一八三六〜九五)の小説に「毛皮を着たヴィーナス」という作品がある。青年貴族クジュムスキーが、美貌の貴婦人ワンダに生殺与奪の権をゆだねるところから発する物語だが、快楽と苦痛の倒錯の小道具として毛皮が用いられている。虎、熊、牛、馬などの毛皮フェティはわが国にも多く、ある人妻によれば「毛皮のシートにくるまっていると、柔らかな皮膚がチクチク刺され、マゾ的な快美感が得られる」と告白している。

●ラバー
 ゴムのこと。SMショップではゴム製のパンティ、ブラジャー、コルセットなどが売られているが、ラバー・フェティがもとめていくものだ。ゴムという材質の、肉を締めつけてくる圧迫感によって、意識が変容してくるのが狙い。またSMプレイの責めにも用いられ、ラバー・パンティを穿かせた女を立たせ、密着して洩れない下着の中に、強制排尿させるという趣向にも用いられる。
「私は特注で、ゴム製のコンビネーション下着(赤ん坊などが着る上下つづきの下着)をつくり、お布団の中で、気密性のあるゴムの下着の中、汗と分泌物でムンムンした中で悶えるのが好きです。時には、オシッコもウンチもその中で洩らす快感はこたえられません」という独身女性の投書が「奇譚クラブ」に掲載されたことがある。

●レザー
 皮革のこと。つまり、動物の毛の無い皮。しなやかな鞭にも用いられ、ベルトを数十本合わせた形の房鞭にも用いられる。さらに、愛人の皮膚の代償として、皮製のハイヒール、ブーツなどを拝跪する者もいる。

●ハイヒール
 靴フェティの中でも、ハイヒール・マニアが圧倒的に多い。フロイトにいわせると、靴とは窪みをもち、その中身に足という物体を容れる点で、女性器を象徴している。また、足フェティの大部分が、靴フェティだともいえる。女王様の踵の高いハイヒールを穿いた足で、顔あるいは胸を踏まれたいというSM的嗜好にも通じる。某氏の告白「私は女王様のハイヒールでおでこを踏まれ、鼻を踏まれ、頬を踏まれると、もう、息もたえだえになり、この世から去ってもいいような桃源郷にひたることができます。ハイヒールを脱いで、女王様の足の匂いを嗅がせて頂き、男根を踏まれ、ハイヒールの踵を、あるいは美しい足の指を、鼻孔に突っ込まれブタのように広げられるだけで、射精してしまいます」(「SMキング」)

●ブーツ
 ハイヒール同様に、ブーツの人気も高い。ブーツの場合、女性の乗馬服を連想させるところからマゾ性はさらに高いといえる。ブーツで蹴られたり、顔を踏まれたりすることを分析すると、当人が、女性騎士に蹴られた馬になったかのような心理の倒錯がある。

●スニーカー
 少女たちの足の蒸れた匂いや、垢などがこびりついたスニーカーをあつめるフェティのこと。踵の磨り減った履き古しのものほど、マニアの垂涎の的。近年、中学校の体育館に忍び込みスニーカーを盗む男の数は増加し、新聞紙上を賑わしている。

●生理用品
 数年前まで、公衆便所などには、水洗で流せないので、生理用品などを入れておく壺が置かれていたものであった。ところが、現代は水に流せる生理用品が主流を占めているため、生理用品フェティは入手に苦労している。妻や恋人などに頼むわけにもいかず、水に流せないタンポンなどを漁り、連夜のごとくゴミ箱漁りをしている者もいる。
 
 
 
 
〜〜『世紀末・性のワンダーランド〜日本の超変態系性現象〜』(矢切隆之)〜〜
 
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