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豊田行二    野望戦士

目 次
第一章 カチカチカクテル
第二章 雷と妖精
第三章 珊瑚礁のいそぎんちゃく
第四章 初花びらき
第五章 ウエディングケーキ
第六章 生け花指南
第七章 よその花
第八章 一陣の風
第九章 触れなば落ちん

(C)Koji Toyoda 1991

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   第一章 カチカチカクテル

     1

「ま、ま、お楽にどうぞ」
 さかげんろうはあぐらをかきながら、かねゆうに向かい側の座椅子をすすめた。ラブホテルの一室、三畳ばかりの次の間である。隣りは畳の上にベッドが置いてある部屋だ。
「おじさまのほうこそ落ち着いたらいかが」
「俺は落ち着いてるよ」
「タバコをくわえた唇が震えているし、ライターを持つ手も震えているから火がつかないじゃないの。私がつけてあげるわ。はい」
 裕子は灰皿の中にあったラブホテルのマッチをすって元太郎のタバコに火をつけてくれた。
「ありがとう。しかし、おじさまはいくら何でもひどいよ。これでもまだ、三十三歳だぜ」
 ゆうぜんとタバコをくわえているつもりだが、どうにも指先が震えてサマにならない。
「でも、妻子持ちでしょう」
「うん」
「三十過ぎで妻子持ちなら、私たち未成年者から見れば、立派なおじさまよ」
「未成年者? 君が?」
 元太郎は眼をむいた。
「十九になったばかりよ」
 裕子は小悪魔的な笑顔を見せた。
 元太郎はゆっくりと改めて裕子の体の線を眼でなぞった。胸のあたりも腰のあたりも丸味を帯び、どう見ても裕子は成熟した一人前の女だった。
 男性体験も、二、三人ではきかない、と元太郎は睨んでいる。だからこそ、気軽に飲みに行こう、と誘ったのだ。
 元太郎は大手の家庭電化製品販売会社の開発係長、裕子はさるデパートの家庭電化製品売場の店員である。
 仕事柄、月に何度かデパートの売場をまわるうちに、元太郎は何人かの女店員と気安く口をきくようになった。裕子もそのひとりである。
 元太郎はこれまで取引先のデパートの女店員と一緒に食事をしても、ホテルへ誘ったことはない。
 元太郎は自他共に許す恐妻家であり、マイホーム亭主なのだ。自分でも浮気などできないと思っていたし、若い女性が浮気の相手になどなってくれるはずはないと信じこんでいた。私大の学生時代には女性と飲んだ経験はかなりあるが、社会人になってからはマジメ一筋で通している。
 だから、食事のあとで冗談半分に裕子をホテルに誘い、あっさりと、いいわよ、と言われたときは、困ったことになったぞ、と思ったものだ。
 裕子にいったん、いいわよ、と言わせたからには、今のは冗談だよ、とは言えなかった。そんなことを言えば、裕子に恥をかかせることになる。
 頭の中で財布の中身の残高を計算し、ホテル代と帰りの車代は大丈夫ということを確認すると元太郎は肩を怒らせて、なるべく部屋代の安そうなラブホテルの玄関に立った。
 それがほんの五分ほど前のことだ。
 いやがる様子もなくホテルへついてきた裕子が十九歳だと知って、元太郎はジュニアがムクムクと頭を持ちあげてくるのを感じた。
 生涯に二度とあるかどうか分からないこのチャンスを逃すようでは男ではない、と自分自身に言い聞かす。
 行動に移ろう……。
 そう思って裕子の方へにじり寄ろうとしたとき、タイミングをはずすように、裕子は立ちあがって、浴室に入っていった。
 浴室では、部屋に案内してくれたホテルの従業員が栓をひねって出て行った給湯口から浴槽に湯が流れ落ちていた。裕子はその湯をとめに行ったのだ。裕子が浴室に入っていくと、間もなく湯の音がしなくなった。
 浴室の床が濡れていたらしく、戻ってきたとき、裕子はパンティストッキングをとって、素足になっていた。タイトのミニスカートから伸びた、素足の白さが元太郎の欲情の炎に油をそそいだ。
 元太郎はむしりとるようにネクタイをはずすと、立ちあがって、裕子と向かい合った。
 裕子の体に手をまわし、引き寄せる。かすかにあえぐ裕子の唇にキスをする。
 裕子は歯を開いて元太郎の舌の侵入を許した。
「お湯が……あふれていたわ」
 裕子はとろんとした眼で元太郎を見る。
 元太郎はスカートの下に指をくぐらせた。綿めんの肌ざわりのいいパンティに触れる。
「若いのに木綿のパンティとは感心だな」
「あら、若いからこそ木綿にしてるのよ。若いときって分泌が盛んでしょう。通気性の悪いナイロンだとムレちゃうし、ムレるとヘンな匂いがするし……」
 裕子は唇を尖らせた。
 理屈が多い子だな、元太郎は思った。もっとも、女の十九歳は理屈の多い年頃なのかもしれない。
 木綿のパンティのゴムは、上も下もきつくなかった。
 元太郎はどちらから指をもぐりこませようかと、一瞬迷ったが、思い切って上のほうから手首までパンティの中へ入れた。
 下からだと、指先しか入らないし、指先だけだと何となく小細工をろうする感じになる。
 手のひらに茂みがさわった。
 茂みはきわめて少ない。中央にチョロチョロという感じである。
 指先は茂みの下方の谷間を探り当てた。
「ああ……」
 谷間の入口にある小さなボタンを元太郎が押すと、裕子は体をピクッと震わせた。同時に唇から声が漏れる。
 指先が更に奥へ進むと、裕子は手に力を入れて、元太郎にしがみついた。
「君も、あふれているよ」
 耳元でささやく。
 裕子は顔を赤らめて、いやいやをした。
「十九歳でこんなにあふれるものなのかねえ」
 元太郎にとって、なにしろ十九歳の女ははつけんざんだ。ついつい愚問が口をついて出る。
「つまらないことを聞かないで。十九歳でも女は女よ。濡れないほうがおかしいわ。男だって、十九歳なら、ちゃんと立つでしょ」
 裕子はうるんだ眼で睨む。
 言われてみればその通りで、十九歳で濡れるのかねえ、などと言うほうがどうかしている。
「お願い。ベッドへ連れてって。立ってるのがつらいわ」
 裕子は膝頭をガクガクさせた。
「よしよし」
 元太郎は裕子のあふれた部分に中指をひっかけたまま、ベッドへ導いた。裕子が歩くたびに、中指がヒダヒダにもまれる。
「ヘンなことしないで」
 口では文句を言ったが、裕子は元太郎の手を払いのけようとはしなかった。
「それにしても、よく濡れるものだね」
 元太郎は裕子をベッドに横にすると、ふやけた中指の先を見ながら溜息をついた。
 ついでに指先を鼻先に持っていき、クンクンと匂いをかいだ。健康な女の好ましい匂いがする。
「ダメッ」
 元太郎の指先を裕子がつかむ。
 元太郎は裕子を脱がせにかかった。
「一年前にヘンなことに感心した男がいたわ」
 元太郎に協力しながら、裕子はかすかに笑った。
「どんなことに感心したのかね、その男は」
「処女でも濡れるんだねえ、って。バカみたい。処女でもちゃんと濡れるわよ。童貞がちゃんと立つのと理屈は同じよ、って言ったら、納得したみたいだったけれど」
「つまり、君は一年前までは処女だったってことなんだな」
「そうよ。でも、体質なのかしら、処女時代からよく濡れてたわ」
「僕だって、しとどに濡れた処女に出くわしたら驚くと思うなあ」
「処女は濡れないと思うなんて男の偏見よ」
 裕子は自分でブラジャーをとり、パンティを脱いだ。ぜいにくのない、みごとな裸身が現われた。
 中心部のかげりは手の感触で確かめたように、谷間の上方にかすかに存在するだけだった。
 むろん、三角形の形にはなっていない。
 乳房は弾力性豊かな盛り上がりを見せていた。その半球型の乳房の先端に、小さな乳首が息づいている。
 にゅううんの形は、左と右では違っていた。左が円形なのにくらべて、右は横に平たく楕円形を描いているのだ。
 その楕円形の乳暈を持つ乳首を軽く吸い、乳首が容積を増大させるのを待って、先端を舌で撫でる。手は乳房全体を軽くつまんではなす。
 やがて、裕子はあえぎながら、濡れちゃう、濡れちゃう、と言いはじめた。
 乳房を唇と舌で愛撫しながら、指は谷間を偵察する。
 裕子はさきほどよりも、さらに濡れていた。濡れ方も、さらっとしたものから、いくらかねばりを持ったものになっていた。
「こんなに濡れる体質なら、処女にさようならをするときにも、あまり痛みは無かっただろうな」
 元太郎は裕子の愛液を指先ですくいながら聞いた。
「濡れることと、それは別問題よ。やっぱり痛かったわよ」
 そう言いながら、裕子はあえいだ。あえぎながら、手をのばして、元太郎の状態を確かめにかかる。
「大きい……」
 裕子はそう言うと身震いした。
 勃起したジュニアが、大きいとか小さいとか言うのは、比較する対象を知っていることだ。何人かの男性経験がなければ大小が分かるはずはない。
「性歴一年で何人知ってるの」
「そんなに多くはないわ」
「二、三人ってとこ?」
「もっとよ。六、七人」
 裕子は元太郎を握りしめるとにんまり笑った。
 
 
 
 
〜〜『野望戦士』(豊田行二)〜〜
 
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