香川潤 『縛られて〜香川潤短編集(4)〜』
香川 潤 縛られて〜香川潤短編集(4)〜
目 次
人妻女体泥棒
イカせてみせる
兄嫁覗き姦
媚肉はじけて
婚前教師性奴嬲り
妻を犯す男
秘密は乱れさせて聞き出せ
(C)Jun Kagawa
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人妻女体泥棒
1
達川弘一が仕事からもどってくると、郵便受けにビデオテープが突っこまれていて、こんな手紙が添えられていた。
「お前の加奈子はいただいた。無事に返してもらいたかったら、明日の午後五時までに三千万円を用意しろ。警察に知らせれば、このビデオテープのコピーが世間をにぎわすことになるだろう」
ワープロ文字だった。
もちろん、差出人の名前はない。
弘一はキツネにつままれたような気分のまま、家にはいった。
「加奈子、帰ったぞ」
いつものように呼んでみたが、返事はない。
まさか……という気分になり、あわててテレビのところに行った。
ビデオデッキにテープをセットする。
画面はしばらくノイズのためにチラついていたが、やがて安定した。
最初に、椅子にすわった妻の加奈子の姿。後ろ手に縛られていた。
弘一はショックを受け、蒼白になった。
それでは、加奈子は誘拐されたのだ……
ビデオには続きがあった。次のカットも、やはり椅子にすわった妻の姿だったが、最初のカットと違うのは、衣服を着ていないことだった。妻は全裸で椅子に縛りつけられていた。
弘一と加奈子は五年前に結婚した。職場結婚だった。そのとき、弘一は三十歳、加奈子は二十一歳だった。加奈子は結婚と同時に仕事をやめ、専業主婦となった。ふたりの間にはいまだに子どもがいない。どちらのせいなのか調べていなかったが、いないならいないでかまわないというのが、ふたりの一致した意見だった。ときたま喧嘩はするけれど、かなりうまくやっているほうだろうと、弘一は思っていた。
もちろん、弘一は妻を裏切ったことなど、一度もない。加奈子のほうだってそうだろうと、弘一は信じている。
その妻が、こともあろうに誘拐されるとは。
いったいだれの仕業だろうか。
全裸で椅子に縛りつけられている加奈子の前に、突然男の姿が現われた。
こちらに背中を向けていて、顔は見えない。黒い皮のジャンパーを着ている。こいつが加奈子を誘拐したのだろうか……
男が加奈子の前にしゃがみこんだ。
いったい、なにをする気だ……?
両手で加奈子の膝のあたりをつかみ、大きく脚を開かせた。
「くそ!」
弘一は画面に視線を食いいらせたまま、歯を食いしばった。加奈子のむき出しの下半身が男の目にはいっているはずだった。
「やめて」
加奈子の声が聞こえた。
「やめろ!」
と弘一もテレビに向かって言った。もちろん、男に聞こえるはずはない。録画されたテープなのだ。
男が手を加奈子の下腹部に差しこんでいるのがわかった。しかし、具体的にどんなことをしているのかは、男の背中にさえぎられて見えない。
「いや……そんなところに、入れないで……あ、だめ……」
縛られたままの加奈子の身体が、こきざみに動いた。
男はいったいなにをしているのか……
男の腕が動いている。
加奈子が首をのけぞらせた。
「いや、だめ……あ、だめ、お願い……」
彼女の声のほかに、なにか湿った感じのする音が、スピーカーから聞こえた。指が粘膜をこする音だろう。
「ちくしょう!」
弘一はこぶしを握りしめた。
ひとしきりその画面が続いたあと、カットが変わった。
加奈子の両足首が、今度は椅子の脚に縛りつけられている。当然、両足は開いている。そして開いた身体の中心がこちらに見えた。
その中心部に、なにかが突き立っていた。
実物を見たことはないけれど、それが性具だということは弘一にもわかった。バイブレーターと呼ばれているものだ。それが、深々と妻の身体に突き立っていた。
男性器を摸した道具を女の部分に受け入れさせられた妻の姿は、痛々しかった。
その彼女が、画面に向かって口を開いた。
「あなた、お願い。あたしを救けて。この人たちの言うとおりにして」
この人たち? では、誘拐犯は複数いるということか?
そして、唐突にビデオは終わった。
なにも映っていない画面を見つめたまま、弘一は呆然と椅子にすわったままでいた。にわかには信じられなかった。
加奈子が誘拐されただって? そんな馬鹿な。いったいなぜ加奈子が……?
画面にはなにも映っていなかったが、弘一の目の前にはまだ、全裸の妻の姿がチラついていた。深々と突き立った性具が、目に焼きついて離れなかった。
どのくらいそうしてすわっていたのだろうか、突然、電話が鳴っていることに気づいた。
弘一ははじかれたように立ち上がり、受話器を取った。
いきなり、男の声が耳を打った。
「達川弘一か」
「そ、そうですが……」
「ビデオは見たかい?」
すると、この男が誘拐犯なのか?
「か、加奈子を……妻を返してくれ!」
「落ちつけ。てめぇの女房は無事だ」
「声を聞かせてくれ」
「落ちつけってば。おれの質問に答えろ。ビデオは見たのか?」
「み、見た」
「感想を聞かせてくれとは言わねぇ。おれのいうとおりにする気になったか?」
「な、なにをすればいいんだ」
「まず、警察に知らせねぇこと」
「知らせてなどいない」
警察に知らせる余裕などなかったというのが、本当のところだった。
「知らせたらおれにはわかる。そのときには女房の命はねぇぞ」
「わかった」
「わかったら、金を用意しろ。できるな」
「三千万だったな。そんな大金、すぐには用意できない」
「するんだ。しねぇと、かわいい女房のすばらしいビデオが、世間に出まわることになる」
「やめてくれ。加奈子をそれ以上、ひどい目にあわせないでくれ」
「おれの言うとおりにすりゃ、返してやるさ。わかったな」
「わかった」
「じゃあ、金を用意するんだ。明日、また連絡する。仕事は休むんだ。いいな」
ガチャンと電話は切れた。
〜〜『縛られて〜香川潤短編集(4)〜』(香川潤)〜〜
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