官能小説販売サイト 砂戸増造 『変態探偵サム1』
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砂戸増造    変態探偵サム1

目 次
第一話 黒い牝犬に鋼鉄の張型を
第二話 社交界の女王は奴隷女
第三話 苦呻の二重奏
第四話 〃魔笛〃の旋律
第五話 美肉処刑の狂演者

(C)Masuzo Sado

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   第一話 黒い牝犬に鋼鉄の張型を

  変態・サム

 おれはサム・モーツアルト、アメリカ流に言うとモーザート、ちっとは教養のある人種でも正確には発音してくれない。
 もちろんペンシルヴァニア・ダッチ、つまりドイツ移民の親父とアングロ・サクソン系のお袋の愛の結晶というやつだ。
 だからサミュエルという母方の祖父の名を貰い、洗礼名は自分でも小っ恥ずかしいようなアマデウスなんてぎょうぎょうしいのがついてござる。
 職業は、私立探偵。
 ニューヨークは四十二丁目のオンボロビルの303号に事務所をかまえ、ドアには麗々しく金文字でプライベート・インベスティゲーターなんぞとハッタリを効かせているが、実状はひどいもんで、週に一人も依頼人が来ないなんてザラだから、懐はいつもピイピイしている。
 世間様は、サンセット・ストリップにしゃれたオフィスをかまえて、ハリウッド・スター並みに美女にもモテモテの金廻りのいい探偵さんや、サム・スペード、リュウ・アーチャーみたいに、ドスの効いたボギイだの人間味タップリで少々おセンチだが結構タフなポール・ニューマン演ずる小説や映画の恰好いいヒーローを想像して、勝手にいい職業だなんて言いやがるが、とんでもない誤解だ。
 おれに持ち込まれる仕事ときたら、安淫売どもが取りっぱぐれた玉代を、拳銃をちらつかせてチョイと凄んで取り立ててやったり、家出娘を探し出してアリゾナくんだりまでテクテク送り届けたり、アル中やペイ中どもをしかるべく施設に送りこんだりの、いわばニューヨークという世界的に巨大な掃き溜めのドブさらいみたいな、ケチで薄汚いことばかりだ。
 御同業たちの御多分に洩れず、おれも三年前までは二十五分署のデカ部屋の飯を食っていたが、元来自由気ままで小役人根性に乏しいおれは、点取り虫で年金ばかり気にしてる上司とは巧くいかず、親譲りでアルコールを口にしないから酒好きの同僚とも交際が悪い。しかも、あれこれと捜査に指図や口出しされるのが大嫌いという、どうしようもないはみ出しの一匹狼の刑事だった。
 だが、分署長のキャプテン・ドーランは、奇妙におれの気質と捜査の腕を買ってくれて、普通はペアでやる仕事をおれにだけは単独行動を許してくれた。
 おれはある種の事件には異常な程熱意を燃やし、かつその解決に格別の有能さを示したからだ。
 それはニューヨーク市警の管轄内で月に百数十件は必ず起こる性犯罪事件の捜査だ。
 もちろんおれは二十五分署勤務のデカだから、自分の管轄内の事件だけ処理すればいいわけだが、おれは暇さえあれば隣接署管内はもとより、市のはるかはずれへさえポンコツ寸前のダットサンで息せき切って現場へ駈けつけ、バッジを堂々と見せて乗り込んだ。
 だからおれは全市のデカどもはおろか、パトロール警官どもの間でも二十五分署のセックス・クレイジイのモージイとして、市警本部から来る鑑識の連中からは〃変態〃サムなんてひどいあだなで呼ばれていた。
 それはおれが性犯罪の被害者である女、それが特に美しい女の場合に示す異常な熱意と興味のせいなのだ。
 エール大医学部で法医学を専攻するつもりだったが、あまりにもハードな医学生の勉学生活について行けず、落ちこぼれたおれが警官になりデカになったのは、フロイト流に言えば幼い時からの美しい女性に対する加虐願望の顕示以外の何ものでもないとおれは自己分析している。
 おれは被害者が美女だと見究めると、とたんにデカにあるまじき異様な熱意に燃え上がる。生きていれば、悲鳴と屈辱の涙にかきくれる女の傷心など全く無視して訊問(事情聴取なんて生易しいもんじゃない)し、ガイシャが仏だったら検屍官も負けそうな熱心さと学識をひけらかして、血みどろのまだ精液の生々しい臭いと失禁した汚物の強烈な異臭を放つ無惨な死体を、平然と素手でいじくり廻すことまでやってのけた。
 だから検屍官の何人かは、おれが現場にきているのを知ると、凍えそうな冬の深夜などポケット・ベルもおっぽり出して飲んだくれたり、風邪をこじらせたなどとぬかして、モージイに委せろとのたまわって、ヌクヌクと暖かいベッドに潜り込み、おれをハッスルさせてくれたもんだ。
 さんざんぶん撲られ、ふん縛られて気絶するまでレイプされ、身も心も打ちひしがれたって風情でヒステリックに泣きじゃくっているガイシャのべっぴんをネッチリと訊問して、どんな風に何回やられて、どんな暴力を受けたかをき出すのも結構な役得だった。恥辱と苦痛と恐怖の極限を味わいながら死んで行ったとびっきりいい女の、もうおれの手をねのけることもできない、まだかすかに温みの残る屍体の白い素肌に触れる時、おれの指はわれ知らず快い戦慄にわななき、胸は高鳴り、自慢の逸物は硬直してドキドキ脈打ってくる。肝心の犯人の見当などどうでもよくなる程の昂奮状態におちいってしまうのだ。
 
 
 
 
〜〜『変態探偵サム1』(砂戸増造)〜〜
 
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