官能小説販売サイト 山口香 『欲望未亡人』
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山口 香    欲望未亡人

目 次
第一話 いたずらな快感
第二話 美肉未亡人
第三話 女体陰画
第四話 憑かれた情欲
第五話 〃おすすり〃上手
第六話 蒼白き欲情
第七話 女王さまの唇
第八話 童貞狩り
第九話 3Pウグイス地獄
第十話 悶絶プレイオフ
第十一話 あらたま美女共艶
第十二話 二度目の花嫁
第十三話 婚前めくるめき

(C)Kaoru Yamaguchi

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   第一話 いたずらな快感

     1

 死亡した夫の父親、小伊京デパートの専務である義父の後押しによりブティック「コスモス」は支店を出すことになった。
 場所は六本木の一角。ファッション関係の店がいくつも人っているビルの一階のフロアである。
 仕入れはもちろん、義父のデパートの取引業者からである。
 内装、開店準備。あきほは原宿の本店と六本木の第一支店とを連日いそがしく行き来していた。
 従業員も二人やとった。本店から一人チーフとして連れてもきた。
 いよいよ一週間後に開店の運びとなった。
 あきほは、配置された陳列台の間をゆっくりと歩いた。
 時刻は午後八時。シャッターを下ろした店内は蒼白い明かりがついているものの、商品が並んでいないために不気味な空間を作り出していた。
 うら口のドアチャイムが鳴った。
 あきほはふり返った。ドアの開く金属性のギギッーという鈍い音がして、スーツをピッチリと着こなした四十前後の男が入ってきた。
 義父のデパートに出入りしている宣伝広告会社の営業部長だった。
「わたくし東心広告の倉田と申します。堂前さんでいらっしゃいますか?」
 男はあきほの旧姓を言った。死亡した夫の籍には入っているが、あきほはブティックの経営者としては常に旧姓を名のっていた。
「そうです。お待ちしてましたわ」
 男はあきほの前に近づいてきた。一メートル八十センチはあるだろう。筋肉質で精悍な面構えである。
「倉田稔といいます。このたびは大変お世話になります」
 倉田は名刺を差し出した。
「こちらこそ、よろしくおねがいします」
 あきほも倉田に向かって小さく上体を折った。ポニーテールにしているセミロングヘアが首から肩口にまわり、オレンジ色のスーツの胸元でフワリッと広がっていった。
「すばらしい店ですね。内装もしっとりと落ちついた感じで」
 倉田は店内に視線を走らせた。そんな彼をあきほは横目でチラチラと見つめた。
「商品が入るのはあすの午後でしたね」
「その予定ですけど……」
「じゃあ、あさってには写真撮影をしましょう」
「開店の日に間に合いますの?」
「大丈夫です。目立つチラシ広告にしますから……」
 昼過ぎに本店にいたあきほの元へ、倉田から電話が入った。
 それ以前にも彼の上司である副社長という男が義父の紹介でなんどかやってきた。同時になん人かの社員を連れてきて下見なども行なっていた。
 営業部長はいま出張していますので、帰り次第ごあいさつにうかがわせます――
 副社長はそう言っていた。
 だから倉田からの電話は初めてであり、初対面でもあった。
 夕刻にでもちょっと新しいお店を拝見出来ませんか?――
 じゃあ、八時ごろでよろしければ――
 助かります。それから、もしよろしければごあいさつをかねて、軽くお食事にでもいかがでしょうか?――
 あきほにしてもこの一カ月、いそがしい毎日だった。やっと一段落。後は商品が陳列され、開店を待つばかり。息抜きしたい気分だった。
「地の利も最高ですから、どんどんお客さんが入りますよ」
「そうだとうれしいですけど……このビルの中はもちろん、近隣にも立派なお店が多くて相手にされないかもしれませんわ」
 倉田との距離は一メートル弱、あきほはかすかに男のにおいをかいだように思った。
 いそがしかったせいで、ここ一カ月、まったく男の肌にふれていない。
 倉田の放つ整髪料と体臭との入り交じったにおいに身体がポーッとあつくなり、下腹部の奥深くにムズッムズッと肉のうごめきをおぼえていた。
「十分に拝見させていただきました。ご期待にそえるように宣伝させていただきます。それじゃあ、もしよろしければ軽くお食事でも」
「そうですね。じゃあ出ましょうか。あっ、その前にちょっとお化粧を……」
 うら口のドアのわきに三メートル四方の事務所兼従業員室がある。キッチンコーナーと簡単な洗面、トイレもあった。
 なかなかの男だわ。ちょっぴりあそび上手な感じの。
 あきほは事務所の洗面鏡に向かって化粧をなおしながら、胸のうちでつぶやいた。
 事務所のドアが開き、倉田が顔をのぞかせた。
「あのう、ちょっとお手洗いをお借りしたいんですけど」
「はっ、はい。こちらですけど」
 あきほは鏡の中に映った倉田の顔を見た。女性に対して、お手洗い、という言葉をかけるのにもはずかしさの表情はなく、堂々としている感じだった。
 倉田はトイレに入って行った。カギを下ろす音が聞こえた。
 早くこの場を逃れなければ失礼になる。
 あきほは口紅をぬりおえると、急いで髪にブラシをあてた。
 耳が研ぎ澄まされてくる。横目でトイレのドアを見つめた時、便器にたまった水を打つ放尿音がもれてきた。
 心臓が一瞬とまった。顔がポーッとほてり、身体が緊張で硬直していく。
 ジャァー。音は耳底にひびきわたってくる。そして身体全体にしみこんできそうだった。
 あの人、音がもれているのに気づいているのだろうか? 気づいていたら、きっと音をたてないようにするのではないだろうか。
 なぜか空ぜきが出そうになった。あわててあきほは口許を押さえて、突き上がってきたせきをかみ殺した。
 ハンドバッグを胸に抱きしめ、足音をたてないようにして、一歩一歩洗面台の前からはなれていく。まるで犯罪者のような気持ちにおそわれていた。
 店内に戻った。動悸がはげしく、息苦しささえ感じられる。
 倉田は出てこない。あきほの脳裏に倉田のシルエットが浮かび上がってきた。
 影絵である。身体を弓なりに反り返し、手を股間にあてている。その手の先に棒のようなものがついていた。
 アレがデカイと、オシッコの量も多いからな。トイレの長い男はアレが大きいと思ってほぼまちがいない――
 以前、一度だけあそんだ中年男が、酔いにまかせてそのように言っていたのをあきほは思い出した。
 手からのびている黒い影は鋭角に突き立っている。しかも少しずつ大きくなっているように見えた。
 あきほはタイトスカートの中で太腿をこすり合わせた。腰をくねらせると股間のあたりがむずがゆいしびれに見舞われている。
 しめっぽくなってきた。におい立つのではないか? という不安にも似た気持ちにもなってくる
 尿意をもよおしてきた。しかし、倉田の放尿音を聞いたばかり。逆に聞かれると思うと、はずかしくてトイレに行くことが出来ない。
「どうも失礼しました。さあ、行きましょうか」
 背後から、倉田がハンカチで手を拭きながら声をかけてきた時、あきほは条件反射のようにビクンッと身体を引きつらせていた。
 
 
 
 
〜〜『欲望未亡人』(山口香)〜〜
 
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